自分の女性器の3Dデータを支援者に配ったとして、わいせつ電磁的記録頒布などの罪に問われた漫画家の「ろくでなし子」(五十嵐恵)被告(48)の上告審判決で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は16日、同被告の上告を棄却した。「女性器アート」やそのデータがわいせつか否かが争われた一連の公判。その同被告が絶妙のタイミングで最新作を出品している展覧会が話題になっている。

 最高裁判決では、ろくでなし子被告の「芸術活動の一環」とする無罪主張は認められず。罰金40万円とした一、二審判決が確定する。

 被告は16日、ツイッターで「有罪でした。でも、この6年、本当に楽しかった。けいさつ、ありがとう」とつぶやいた。

 同被告は2013~14年、東京都内のアダルトショップで、自分の女性器をかたどった石こうに着色や装飾を施した作品「デコまん」を展示。活動資金を寄付した人に、女性器の形状を3Dプリンターで再現できるデータを配った。

 一連の公判では、わいせつ性の基準の判断が最大の争点となった。一審東京地裁判決は、3Dデータに対して「女性器の形状を立体的、忠実に再現している」としてわいせつ性を認定。データ提供は有罪と判断した。二審東京高裁も支持した。

 一方、石こうの展示品は一、二審とも「ただちに女性器を連想させず、一定の芸術性、思想性が認められる」とわいせつ性を否定した。検察側が上告しなかったため、展示品については無罪が確定している。

 そのろくでなし子被告が最新作を発表し、再び話題になっている。

 新宿眼科画廊(東京都新宿区)で行われている「バースト・ジェネレーション‥死とSEX」展(22日まで)で「逮捕から祝6周年! まんことあそぼう! よいこのおもちゃシリーズ第2弾、3dまんこちゃん人形」なる作品を展示している。

 展示物のシチュエーションは警察署の留置場だ。ブロック玩具LEGOをモデルにして作られ、中をのぞき見るとおりの中にいるのは、まんこちゃん。罪を感じているのかいないのか分からないが、ポツンと立っている。黄色く塗られたクリトリスが目を引く。ぴーぽくんやピンク色の服のなしこもいる。動画でも同じシチュエーションが展開される。

 今回は、最高裁判決と同時開催という絶妙なタイミングでの作品展示になった。

 当のろくでなし子被告は「日本では久しぶりの展示になります。この作品は留置場を舞台にしています。捕まってしまった時にここに入りました。この作品は3Dプリントで出力しています。まんこちゃん、ぴーぽくん、けいさつ、なしこ(自分)の4種がいます。おりの中にいるのは、まんこちゃんですね。3年くらいかけて3Dプリントを勉強しました。映像の方も3Dです」。

 日本では「まんこ」という単語は禁句だが…。

「今、自分の住んでいるヨーロッパでは、ごく普通の会話でも出てくるワードなんですよね。みんなに『どうしてまんこがダメなの?』って不思議がられます。でも、日本はとても好きなところです。人は優しいですし、食べる物もおいしい。魅力的な国だと思っていますよ。今後もどんどん作品を作っていきたいと思っています」

 今回の展示を企画したのは、ジャーナリストで現代美術家でもあるケロッピー前田氏。自身も身体改造に関する作品を出品している。

 さらに、画家の根本敬氏、死体写真家の釣崎清隆氏、雑誌「バースト」創刊編集長のピスケン氏、「陰部神社」で知られているPONO(ハート)FEKO氏、「褐色のエロス画家」ブライアン佐藤氏、「淫魔の鉛筆画家」西牧徹氏も参加。濃すぎる面々が一堂に会していることもあり、連日大盛況だという。

 判決を機に芸術をめぐる論議が再燃しそうだ。