中国企業が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」への逆風が強まっている。

 ティックトックの動画は数十秒と短く、アプリ内に複数の動画フォーマットが設定されているため編集も容易。おかげで、一気にインスタグラムやツイッターと肩を並べるソーシャルメディアに発展した。

 開発したのは2012年創業のIT企業「北京字節跳動科技(バイトダンス)」だ。16年9月に中国国内向けの動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」を発表。その海外版となるティックトックを17年5月にリリースした。

 米調査会社によると、両アプリはこれまでに全世界で累計20億回以上ダウンロードされている。日本では、きゃりーぱみゅぱみゅ(27)や多くのアイドルがダンスなどの動画を投稿。先ごろ芸能界を引退した木下優樹菜が利用していたことでも知られている。

 一方で、ティックトックはドウインと分けて運営され、トップは米メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーの元有力幹部が務めており「中国色」をできるだけ隠したいという意図が見え隠れする。中国系アプリと知らない利用者も多いだろう。

 厳しい見方が広がったのは昨年11月だ。中国政府による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒の少数民族、ウイグル族への弾圧を非難する動画を「新たなホロコーストだ」と投稿した米国人女性のアカウントが、一時使用停止となったのだ。中国政府の意向をくんだ措置と見なされ、批判が殺到した。

 中国との関係が悪化している米国では、軍が安全保障上の懸念からすでに利用を禁止。さらにポンペオ国務長官は6日、国内で使用禁止にすることを検討中だと表明した。中国との係争地域で軍事衝突に発展したインドも6月末、国内での使用禁止を発表。対中関係が悪化するオーストラリアも禁止を検討しているという。

 ティックトックは「中国政府に利用者のデータを提供したことはないし、求められても提供しない」と反発するが、各国の風当たりは強い。日本政府はどう判断するか。