東京都は9日に、新型コロナウイルスの感染者が新たに224人報告されたと発表した。一日当たりの感染者数では、緊急事態宣言下の4月17日の206人を上回り、過去最多となった。小池百合子東京都知事(67)から“夜の街”と名指しされた新宿区歌舞伎町などで、積極的に検査が行われた結果ということもあってか、いまだ自粛要請などが行われる様子はない。こんな首都・東京の不安な状況に、いまだ感染者ゼロの岩手県から「早く何とかしろ!」の声が出ている。

 東京で感染者が急増した背景には、PCR検査の数が増えたことや歌舞伎町などの“夜の街”の関係者に積極的に検査を実施し、ホストクラブなどの従業員らが応じたことがあるとみられる。

 だが、6日連続の100人超えが8日に75人になったかと思いきや、9日に一挙に224人に膨れ上がったのだから、小池知事がいくら涼しい顔で会見して「夜の街が」「比較的若い世代が」と繰り返しても、都民の不安は増すばかりだ。それでも、小池知事は相変わらず「不要不急な他県への移動を控えるよう」と都民に呼び掛けるだけ。

 新宿区では、感染が確認された人に1人当たり10万円の見舞金の支給を決めているが、歌舞伎町関係者は「年の若いホストにとっては、感染が判明しても症状はどうってことない。仕事に行ってコロナにかかっても、10万円をもらえるからラッキーくらいにしか思っていないヤツもいる。もともとコロナで商売も上がったりだしね」と指摘する。

 そんなホストが客の女性に感染させて、その女性が家族や友人に…などと考えると恐ろしい。

 欲望渦巻く大都市とは対照的に、地方ではコロナに対する認識がまったく違う。

 島根県の丸山達也知事は9日の定例会見で「『夜の街』では何に気をつけたらよいのか分からない。居酒屋には入っていいのか悪いのかも分からない」と、感染が広がっている場所や業種を明示するよう都に求めたぐらいだ。

 感染者がゼロであることが世界的に注目されている岩手県民は「感染者が出ていなくても外出を控えて、外出するときは必ずマスクをする。真面目な県民性ゆえ、コロナ感染者ゼロを死守することにナーバスになっています。東京の“夜の街”の人はコロナが怖くないんですか?」と不思議がっている。

 また、新型コロナの影響で、里帰りできなかった人の帰省自粛も継続しているようだ。県をまたぐ移動の自粛が解除されたにもかかわらず、帰省を迎え入れない家庭もある。ツイッターでは、そんな実家の父とのLINEメッセージのやりとりが投稿され、炎上した。帰省していいか伺いを立てたところ、父が「絶対に帰るな」「岩手1号はニュースだけではすまない」と危惧するメッセージを送ってきたという。

 そんな岩手県のある関係者は「こんなに感染者が増えているのに、小池さんは『対策を考えて迅速に行動することが大切』なんて人ごとのように言っている。対策とは、こんな状況にならないように手を打つことでしょう? 日本の首都がこんな状況では、岩手や他県の人たちが頑張っても、東京から広がればどんなことになるやら。早く何とかしろ!と言いたい」と怒りにも似た不安の声が飛び出している。

 また、兵庫県の井戸敏三知事は9日、神戸市で開かれた県の新型コロナウイルス対策本部会議の冒頭あいさつで、感染者が急増する東京について「諸悪の根源」と発言した。直後に「『諸悪』は取り消す。感染源は東京が多い」と修正。会議後の記者会見で井戸氏は「決めつけるわけにはいかない。発言は取り消す」と改めて釈明した。

 東京での感染者激増に、菅義偉官房長官は「直ちに再び緊急事態宣言を発出する状況に該当するとは考えていない」と述べ、移動の自粛も要請しない方針だ。だが、いまだ感染者ゼロの岩手などは、首都・東京の感染者増を都知事以上に不安視している。