河井夫妻買収事件で地元議員ら94人〝おとがめなし〟の違和感 横粂弁護士が指摘

2020年07月08日 06時15分

河井案里容疑者

 カネを受け取っておいておとがめなしなのか! 昨年の参院議員選挙を巡って公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕された前法相の河井克行容疑者(57)と妻の案里容疑者(48)が、8日に起訴される。総額約2900万円を買収目的で広島の地元議員ら94人に配ったとされるが、東京地検特捜部は地元議員らの刑事処分を見送る方針。こんな〝赤信号みんなで渡れば怖くない〟みたいなことが許されていいのか、弁護士に聞いた。

 事件の舞台は案里容疑者が出馬した昨年の参議院選挙だった。特捜部は河井容疑者を選挙運動を取り仕切る「総括主宰者」に認定する見込み。公選法では総括主宰者の罪を重くしている。両容疑者の公判は起訴から100日以内に判決を出すよう努める「百日裁判」で審理される見通しだ。

 一方、地元議員ら94人は〝無罪放免〟でいいのか。何十万円ものカネを受け取った人もいれば、きっぱり拒絶した人もいる。議員辞職した人もいれば、辞めない人もいる。特捜部と司法取引でもあったというのか。

 元衆院議員で弁護士でタレントの横粂勝仁氏(38)は「司法取引〝的〟なことがあったのでしょう。司法取引は談合や脱税などの経済犯罪や、薬物、銃器犯罪や組織的詐欺などに限定されています。今回の買収事件は対象ではありません。しかし、買収を立証するために口を割らせたい検察が、現場レベルで『話せば悪いようにはしない』と言ったのかもしれません」と指摘した。

 カネを受け取った地方議員らに有権者は何ができるのか。

「地元の検察に告発することは可能です。告発は誰でもできます。94人それぞれが違う事案なのでバラバラに告発となるでしょう。告発をされたら検察は、起訴か不起訴かの結論を出さないといけない」(横粂氏)

 もっとも、告発を受ける検察も処分を見送った検察も同じ組織なので、何かしら理由をつけて不起訴にする可能性が高いという。

「反省しているとか返金したとか、辞職により社会的制裁を受けたとかで不起訴の中でも起訴猶予、クロだけど起訴しないという判断はあり得る。そうなったら次は検察審査会があります。検察組織とは関係ない市民が判断するため、こちらの判断が注目になるでしょう」(同)

 不起訴はおかしいという結論になれば、舞台は公判に移る。あとは裁判にゆだねることができるわけだ。

 今回の事件には自民党本部から提供された1億5000万円が使われたとの指摘もあり、自民党本部や安倍晋三総裁の責任問題も浮上している。

「公選法には買収目的交付罪があり、資金提供した側も買収を分かっている場合は罪に問われます。しかし、党として指示した証拠がない限りは罪にはならない。刑事責任よりも、結果として買収に使われたかもしれないという政治責任の方が大きい」(同)

 それにしても、100人近くの政治家が、ダメと分かっていてカネを受け取るとはどういうことなのか。元衆院議員の金子恵美氏はラジオ番組で金権選挙の風習が残っていることを明かし、同じく元衆院議員の豊田真由子氏もメディアで同様の指摘をしていた。

 横粂氏は「このご時世、さすがに選挙のためにおカネを配れという人はめったにいませんが、政治活動の中であくまで合法的におカネを配れということはありました。ただ『アナタはいくらくれるの?』という地方議員の話を聞かなかったわけではありません。しかし、減っていますよ」と話している。

 選挙にはびこる金権政治を打破するために、94人も立件すべきではないか。「政治の浄化のためにも厳しくするべきです。もらってもいいと誤解を広げてしまいかねない」(同)。

 もちろん、告発以外にも選挙で有権者が鉄槌を下すことも可能ということも指摘しておきたい。