高校生棋士の藤井聡太七段(17)が23日、東京・渋谷区の将棋会館で行われた第61期王位戦挑戦者決定戦で、永瀬拓矢2冠(27=叡王、王座)を破り、挑戦権を得た。

 8日に開幕した棋聖戦5番勝負で、17歳10か月20日の最年少挑戦を成し遂げており、2つ目のタイトル戦となった。

 昨年の王位戦で、史上最年長での初タイトルを獲得し、〝中高年の星〟と呼ばれる木村一基王位(47)への挑戦権をかけた対局は、4日に行われた棋聖戦挑戦者決定戦と同じ顔合わせとなったが、127手で再び藤井七段が勝利した。

 これで「最年長最年少」の対決が実現することに。粘り強い棋風で〝千駄ヶ谷の受け師〟の異名を取る木村王位について、藤井七段は「力強い受けに特徴があるという印象です」と語った。

 藤井七段は現在、渡辺明3冠(36=棋聖、棋王、王将)に挑戦中の棋聖戦に続き、ダブルタイトル挑戦となったが、王位戦では未知の世界が待ち受ける。

 まず5番勝負の棋聖戦に対し、王位戦は7番勝負。さらに棋聖戦は持ち時間5時間で1日制だが、王位戦は持ち時間8時間で2日制の対局となるのだ。

 2日制の対局とは、1日目は午後6時まで指した後、手番を持つ方が次の差し手を紙に書き、封筒に入れて立会人に渡す〝封じ手〟が行われる。その日はそれぞれが1人で宿泊し、2日目の朝に封じ手を開いて対局を再開する。

 藤井七段は王位戦について「じっくり考えることができる。楽しみです」と話したが、初となる2日制がどう出るのかは未知数。大人びた雰囲気を持っているとはいえ、まだまだ高校生とあってファンからは「じっくり考えすぎて眠れなかったら…体調が心配だ」との声も上がる。

 タイトル戦は一流ホテルや老舗旅館などで開催され、地方での対局も多い。宿泊する部屋は、ホテルならおそらく最高級のスイートルームなどになる。そんな部屋に高校2年生が1人で泊まるのだから、「緊張して寝られないかも」などと、いらぬ心配もしてしまう。

 また将棋連盟関係者によると「タイトル戦において、電子機器は対局開始前までに預かり、対局終了まで運営で保管します。また外部との遮断はありませんが、対局者は対局場および宿泊場所の敷地内からは出てはいけない決まりになっております」という。もちろん、今どきの高校生のように「スマホで気分転換」などもできないわけだ。

 藤井七段は「初めて訪れる場所もあるかと思う。非常に楽しみ」と語ったが、通い慣れた東西の将棋会館とは異なり、気分転換の難しさも考えられそうだ。

 王位戦は7月1~2日、愛知県のホテルアークリッシュ豊橋で開幕し、その後、札幌、神戸、福岡、徳島など全国各地で行われる。