「飛鳥II」の火災 クルーズ業界に打撃

2020年06月17日 17時00分

 豪華客船の受難が続く――。横浜港に停泊していたクルーズ船「飛鳥II」で16日、火災が発生し一時騒然となった。横浜港の豪華客船といえば、今年2月にダイヤモンド・プリンセスで新型コロナウイルスの集団感染があったばかり。大打撃を受けたクルーズ業界は、閉鎖空間での危険なイメージの払拭に奔走していたが、そんな中、あまりにバッドタイミングで起きた火災。クルーズ業界はコロナ禍前の優雅な時を取り戻せるのか?

 火災は16日午後1時過ぎ、最上階デッキの資材置き場で起きた。もくもくと黒煙が上がり続け、鎮火したのは発生から約3時間20分後。幸い乗客はおらず、乗員約150人にケガもなかった。

 元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は「家具とかじゅうたんなどの資材が入っていた一室が燃えたとみられます。大火災に見えたかもしれないが、燃えやすい物があれば、もっと黒煙は出ていたはず。鉄板で囲われていたので、被害も少なく済んだ」と分析する。

 運輸安全委員会は17日以降、船舶事故調査官を派遣して原因を調べる。

「漏電とかたばこの火の不始末、工事をしていてスパークしたとかが考えられる。もちろん放火の可能性も疑う。調べれば放火も含めて、原因は分かります」(金子氏)

 飛鳥IIは郵船クルーズが運営し、2006年に就航。全長241メートル、約5万トン、乗客定員は872人と日本最大級で、主に横浜港を起点にしたクルーズで人気を博していたが、コロナ禍で状況は一変していた。

 今年2月にクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセスの新型コロナの集団感染が判明。横浜港に足止めされ、乗客乗員約3700人のうち712人が感染し、13人もの死者が出る悲劇となった。

 これにより飛鳥IIは予定していたクルーズを取りやめ、コロナ対策に着手。乗船時の検温、乗船定員の制限、ビュッフェスタイルの食事提供の取りやめ、ダンスタイム等のエンターテインメントの中止など3密、感染予防対策を徹底した。3月に客室内を工事し、4月1日から横浜港に停泊。デッキには「海が心をつなぐ がんばろう!日本」の横断幕が掲げられ、来月15日からの運航再開に臨む矢先だった。

 クルーズ船内は閉鎖空間のため、洋上で火災が発生すれば大惨事になりかねない。過去には沈没事故も起きており、火災には神経質とされている。客室やバルコニーでの喫煙は禁止され、ダイヤモンド・プリンセスでは、たばこの吸い殻やマッチを海に投げ捨てた場合、風に流され、火災の原因になる可能性があり、禁止行為として厳守が呼びかけられている。違反した場合は250ドル(約2万6750円)の罰金が科されるほどだ。

 金子氏は「クルーズ船は消火栓や消火器が至る所に付いていて、内装も燃えにくい素材を使用するなど、安全・防火対策は絶えず行っているはず。それでも火災がひとたび起きれば、船内は狭く、複雑な構造で、逃げ遅れれば大変なことになる。乗客は地上のホテルに宿泊する意識ではなく、閉鎖空間の怖さが潜んでいることを少しでも意識し、乗船してもらいたい」と話す。

 飛鳥IIでは来年3月に横浜港を出航し、シンガポール、スエズ運河、イタリア・ジェノバ、スペイン・バルセロナ、ニューヨーク、パナマ運河、ロサンゼルス、ハワイを経て、横浜港に帰港する107日間の世界一周クルーズが予定されていた。

 今回の火災で、今後の運航に影響が出るのは必至で、コロナ禍前の優雅なクルーズの時が戻るまでには、まだまだ時間がかかるようだ。