次の標的はエジプトのピラミッド!! 黒人男性暴行死事件を機に、米国から欧州にまで拡大した「黒人の命も大事だ」運動が、とんでもない方向にエスカレートしている。米国各地で「先住民の虐殺者」として15世紀イタリアの探検家クリストファー・コロンブスの像が破壊されたが、さらに英国では反人種差別を訴える活動家らが「エジプトのピラミッドは奴隷を酷使して建てられた」と主張、撤去を求めているというのだ。

 米メディアによると、南部バージニア州リッチモンドの公園に立つコロンブス像が先週、デモ隊に倒され、近くの池に投げ込まれた。中西部ミネソタ州セントポールでもデモ隊がコロンブス像をワイヤで引っ張り、台座から引きずり下ろした。さらに東部マサチューセッツ州ボストンでは像の頭部が壊された。

 米国では近年、15世紀に米大陸に到達したコロンブスを「先住民の虐殺者」とする見方がある。暴行死事件を機に、現在の基準に照らして人権侵害を犯した人物への批判が強まったようだ。

 またリッチモンドにある南北戦争時の南軍司令官リー将軍の像や、南部ケンタッキー州議会議事堂にある「南部連合」初代大統領ジェファーソン・デービスの像を撤去させようという動きも活発化している。

 リー将軍は奴隷制度を容認した人物と見なされている。またデービスの大理石の像は、リンカーン元大統領の銅像近くに展示されていて、奴隷制を容認した南部連合大統領と、制度廃止に尽力したリンカーンの像が同じ場所にあるのは不適切というわけだ。

 こうした動きは米国だけでなく欧州でも活発化している。英国西部ブリストルでは先週、人種差別に抗議するデモ参加者らが、17世紀の英奴隷商人エドワード・コルストンの像を壊し、近くのエイボン川に投げ入れた。

 続けて参加者らは「エジプトのギザのピラミッドやスフィンクスは、奴隷によって建てられた」と決めつけ、それらの世界遺産を撤去するよう訴えたのだ。

 この報道を受けてエジプトのオンライン紙エジプト・インディペンデントは、2010年1月に報じられた、ピラミッド建設に動員された人たちの墓が発見された際のロイター通信による記事を引用。4000年以上前、当時の王が手厚く葬ったことが判明し、近年の研究では「ピラミッド建設に携わったのは奴隷ではなく賃金労働者だった」とされているとした。

 さらに英メディアによると、ビートルズの曲名に使われ、有名になった英中部リバプールの通り「ペニー・レイン」で、通りの名前を記した表示板が塗料で汚される被害が相次いだ。過去の奴隷商人に由来するとの不確かな情報があり、反人種差別デモに乗じた行為とみられている。

 一方、歴史をさかのぼって既に亡くなった人物を「人種差別主義者だ!」と糾弾する動きに、フランスのマクロン大統領は14日、国民へのテレビ演説で「憎しみで歴史を修正するべきではない」とくぎを刺した。さらに「わが国は誰の名前も歴史から消し去ることはしない。誰の仕事も忘れない。像も壊さない」と明言した。

 英BBCによると、フランスでは先週末、パリ中心部の共和国広場に人種差別反対を訴える約1万5000人が集結したが、無許可でデモ行進しようとしたため、警察が規制。参加者らが投石し、機動隊は催涙ガスで応酬する騒ぎとなった。