「俺には関係ない」は間違っている。東京都は14日に新型コロナウイルスの新規感染者が47人と発表。注目はそのうち18人が歌舞伎町にある同じホストクラブの従業員だったことだ。ホストクラブに行かない人たち、特に男性は自分とは無縁と思いがちだが、そんなことはない。“ホストクラスター”の影は意外に近くまで伸びてきている。

 ホスト18人の感染は、既に感染者が出た新宿エリアにあるホストクラブの男性従業員で、店舗側が新宿区の呼び掛けによるPCR検査に協力して判明した。これとは別に夜の街との関連から14人の感染者がいた。また、感染者が増えている武蔵野中央病院で新たに7人の感染者が出ている。新規感染者数47人という数字は、夜の街に対する集団検査をすれば、もっと増えかねない。

 夜の街を重点的に検査したからだとしても、ホストの感染者は多いように思われる。

 ホストクラブ幹部は「ホストの多くは“寮生活”でワンルームに数人で暮らしています。客のボトルを空けるために、複数人のホストが同じマドラーを使って酒を作ります。ゲームで口移ししたりもするでしょう。業者が納入した清潔なおしぼりをテーブルに広げ、ホストクラブ流に巻き直しますが、それは下っ端ホストの手仕事。そりゃ、感染したホストが1人いたら、店中のホストに広がりますよね」と語る。

“ホストクラスター”の発生にネットでは「一般は関係ない」「縁がないし大丈夫」と不安視しない人もいる。本当にそうだろうか。

 風俗情報誌「俺の旅」の生駒明編集長は「ホストクラブの客には風俗嬢が多い。風俗嬢は働いている時、演技をしているわけです。裸になって、客に話を合わせるのはストレス。現金をたくさん持っているので、ストレス発散にホストクラブへ行く。イケメンがお姫様扱いしてくれるのだからハマってしまいます」と指摘した。

 つまり、ホストから客の風俗嬢へ、さらに風俗に通う男性へコロナがうつっていくことになる。それだけじゃない。その風俗客が家庭や職場にコロナを拡散させてしまいかねないのだ。

 その「家庭や職場」に自分がいるということも的外れな想像ではないからこそ、「関係ない」とは言えないのだ。「風俗客の払ったお金が風俗嬢から通っているホストへ渡っていく。逆にコロナがホストから風俗嬢を通して風俗客へ…。あり得ますね」(生駒氏)

 大金を払ってコロナに感染するなんて悔し過ぎる。風俗客にできることはないのか。生駒氏は「『ホストに通っている』と自分から言う風俗嬢はいません。風俗客にできるのは早番の女の子を狙うことでしょうか。口開けが一番です」と指摘した。

“早番”とは早朝からの時間帯に店に出勤すること。ホストクラブに通いながらこの時間帯に出勤はしないだろうという論理で、“口開け”とはその日最初の客になることだ。

 もっとも風俗客の心構えだけで感染拡大が防げるものではない。政治の力の方が大きいはずだ。

 19日には夜の街に対する休業要請が解除される。ホストクラブでのクラスターが判明したというのに、西村康稔経済再生担当相は14日に「直ちに変更するつもりはない」と話している。

 生駒氏は「すでに歌舞伎町ではヘルスもソープもピンサロも営業していますよ。飲食店もです。だんだんと人通りも増えてきました。今さら休業を延長と言われても無理でしょう。家賃は高いですし、ロクな補償がない中では営業せざるを得ないのです」と、日常に戻り始めた歌舞伎町は後戻りできないと言う。

“ホストクラスター”は誰にとっても人ごとじゃないのだ。