死去ジョージ秋山さん 夜のお店で“笑劇”あいさつ

2020年06月02日 16時00分

 テレビドラマにもなった長期連載漫画「浮浪雲(はぐれぐも)」などで人気を博した漫画家のジョージ秋山(本名・秋山勇二)さんが5月12日に死去していたことがわかった。77歳だった。告別式は家族で行った。ユーモアとペーソスに富んだ作風を得意とする一方で、独自の家族論や宗教観に基づく漫画やエッセーも手掛けた。名作漫画を描き続けた秋山さんの人間味あふれる豪快エピソードを一挙公開――。

 東京都生まれ、栃木県出身の秋山さんは上京し職を転々とした後、漫画家森田拳次さんのアシスタントに。1966年に「ガイコツくん」でデビュー。講談社児童まんが賞を受けた漫画「パットマンX」などのギャグ漫画で人気を得た。

 その後、人間のモラルを問う作風へ一転。貧しい青年が金と地位を求めて連続殺人を犯す「銭ゲバ」(70~71年、少年サンデー)は評判を呼び、映画化もされた。

 だが、同時期に少年マガジンで連載を始めた「アシュラ」は人肉食などの過激な描写が問題視され、一部の県で有害図書に指定された。

 休筆後、73年からビッグコミックオリジナルで「浮浪雲」の連載を開始。幕末の江戸を舞台にした人間味のある庶民の物語は、広く共感を集め、44年続く長寿のヒット作となった。同作の他、「恋子の毎日」「ピンクのカーテン」も映画やドラマになった。

 秋山さんの口癖は「俺を刺激しろ」だったという。

 ある編集者は「常に面白いもの、新しい流行を探していました。編集者を連れて、ふらりと新宿の歌舞伎町に出掛けることもあるのですが、そんな時も店が決まっているわけではない。呼び込みと話して気になった店に入る。面白そうな話をする外国人だったりするとついていってしまい、痛い目に遭ったこともあるとか。有名な話ですが、水商売の店などで隣についた女性に名刺として1万円札を出し、『福沢諭吉です』とあいさつをするんですよ」と明かす。

 受けた刺激を作品にフィードバックしていたのだろう。

 また、秋山さんは著書などで記しているように「女はみんな口説かれたがっている。だから男は女を口説かないと失礼」がモットーだったという。しかし、前出の編集者は「15年ほど前から『男が弱くなった』と嘆いており、『今の男は女を口説かない。傷つくのが怖いから口説かない。だからダメなんだ』と言っていました」と話す。

 そんな秋山さんといえば、女性の後ろ姿、特に艶っぽいヒップを描かせたらまさに絶品だった。

 別の編集者は「歌舞伎町の風林会館の前で『そこでしゃがんで、歩いていく女を見てみろ。俺はその目線で描いている』と言われたんです」。

 ほかにも有名な口癖があった。それは「俺はマグロ。止まると死んじまう」。常に新しいものを吸収して、作品を作り続けていた。生きる漫画の教科書とも言える秋山さんに出版社側も甘えたのだろう…。

「各社が“編集者とは何たるか”を学ばせるために新人をつけることが多かったんですが、『うちは教育センターじゃねえんだ!』と笑っていましたね」(同)

 とにかく漫画を作ることに貪欲だった。

「大物なのに、描きたい衝動にかられると、自分から出版社に持ち込むんです。また、ある編集者が朝出社したところ、4枚のファクスを発見。決まってもいない連載の『予告編』だったんです」と同編集者。

 小学館によると「浮浪雲」の連載を2017年に終え、その後も次回作を構想していた中で亡くなったという。