テレビに出ない芸人のコロナ残酷物語 おネエ芸人・まりもちゃんの場合

2020年05月31日 11時00分

高齢者施設でお年寄りと触れ合うまりもちゃん

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でエンタメ界は壊滅的状況だ。テレビで見るタレント以上に悲惨なのが地域や企業のイベント、高齢者福祉施設や温泉旅館での公演で生計を立てている余興芸人だ。

「ものまねは余興芸で、不安定な職種ですからね。それは常に頭にあるつもりでしたが、今回ほど痛感したことはありません」。こう嘆くのは、小林幸子から松田聖子、中森明菜など往年のアイドルのものまねをなりわいにしている、その道21年のおネエ芸人・まりもちゃん(51)だ。

 2月下旬から6月まで、首都圏を中心に営業が20件近く入っていたが、すべて延期か中止になった。「強行されたイベントはなく『やります』と言われてても土壇場でキャンセルに。全部、電話でアッサリ言われました。理由が理由だけに『そうですか』で終わりです」

 例年、春はさほど忙しくないが、昨年もほぼ同じ件数あった仕事が今年は全てなくなり、数十万円の収入が断たれた。「なくなって一番痛かった」のは3月後半の15日間、東北の温泉旅館で入っていた長期公演。交通費は自腹だが、宿泊代はタダで、1日数万円のギャラが入るはずだった。

「お客さんが激減したからと、2月終わりにキャンセルの連絡がありました。毎年、この時期は地方の温泉旅館に長期で入って稼ぐんです。団体旅行客が完全に戻らない限り、また呼ばれませんね。東日本大震災のときも同じようなことがあり、再び呼んでもらうまで7年かかりましたし」

 7~8月に何本か仕事の予定はあるが「もともと春に決まっていた現場が延期になった分だったり、野外の夏祭りなので、キャンセルになる可能性は高い」という。11月に入っていた営業も「医療関係の方々が集まるイベント」ということで、すでに中止が決定。「オイシイ営業」だという屋形船も、集団感染が起きてマイナスイメージがついてしまった。「具体的に決まってませんでしたが、年に何回もあるんです。今後、仕事がくる見込みはあるかな」と悲観的にならざるを得ない。

 飛んだ仕事の大半は、高齢者施設や健康ランドでのショー。普段からお年寄りを楽しませる機会が多いだけに、気が気ではない。「老人施設での営業は新規もありますが、リピートのほうが多く、定期的にうかがっているところが多いんです。非常にお世話になっているので…」

 今は細々と蓄えた貯金を切り崩し、ライブ配信やネット番組などにリモート出演している。「自分はノンキな独り身だからまだいいけど…」と同業者の声を代弁する。「ものまね芸人のほとんどは営業メインで、みんな同じような状況。所帯持ちの芸人は大変だと思います」

 コロナは高齢者のささやかな楽しみまで奪った格好だが、施設ではこれから夏祭り、敬老の日イベント、秋祭り、クリスマス会と例年なら催しが続く。まりもちゃんも決して手をこまねいているわけではなく「自ら感染予防を徹底した対策を考え、何とか皆さんの前で生のショーを披露したい」という。

「例えば、大きな窓がある部屋なら自分だけ外に出てショーとか、トラックでうかがってその荷台でショーとか。あるいは車でお邪魔して、車内で準備してそのまま会場へ行き、控室不要にしてもらい、人との接触を極力避けるとか」

 観客が無反応のままショーを続けたり「似てねえよ!」と酔客から物が飛んできたりと、過酷な現場もたくさん経験してきた。見かけの割にタフでドM気質のまりもちゃんは、転んでもただじゃ起きない。