臨床心理士が分析する韓国史上最悪のデジタル性犯罪「n番部屋事件」の闇

2020年05月20日 16時55分

3月に逮捕された当時のチョ容疑者(ロイター)

 コロナ禍の裏で、韓国で大問題となった史上最悪のデジタル性犯罪「n番部屋事件」。この事件をきっかけに韓国では19日、性犯罪を厳しく取り締まるよう改正した「n番部屋防止法」が施行された。最悪のデジタル性犯罪は、どうして起こってしまったのか…。

 未成年者を含む少なくとも74人もの韓国人女性が性的暴行を受け、その様子が保秘性の高い通信アプリ「テレグラム」内に作られたチャットグループで、有料会員に生配信されていた「n番部屋事件」。

 性的な動画が「1番部屋」や「5番部屋」などと番号が振られたチャットグループで共有されていたことから「n番部屋」と呼ばれていた。

 2018年の後半から始まっていたとされる同事件には、複数の人物が関与。チャットグループを運営していたとして今年の3月に逮捕されたチョ・ジュビン容疑者(24=逮捕時)は、インターネットで「アルバイト募集」とうたって女性に顔や裸の写真を送らせ、これを流出させると脅してわいせつ動画を撮影させていた。

 さらに今月、チャットグループの創設者とされるムン・ヒョンウク容疑者(24)が逮捕された。

 韓国メディアによると、ムン容疑者らは被害女性らを「奴隷」と呼び、自分の奴隷であることを誇示するため、女性らの体にナイフで「奴隷」などと刻ませていたというからおぞましい。

 女性をモノのように扱った残虐な犯行を、臨床心理士の福田由紀子氏はこう分析する。

「ホモソーシャル(男性同士の付き合い)の中での男性性の顕示や、社会心理学で言うリスキーシフト(集団が過激化する傾向)が起きていたように感じます。女性に対してどれほど残虐なことをしたかということで、ヒエラルキーが作られていったのではないでしょうか。性犯罪は、性欲がきっかけになってはいますが、加害時には勃起していなかったなど、性欲以外の支配欲や征服欲が犯行既遂の動機となっていることがほとんどです」

 同事件を受けて、韓国では性犯罪の処罰を強化するために法律を改正した通称「n番部屋防止法」が19日、施行された。

 性行為の同意能力があるとみなされる年齢が既存の13歳から16歳に引き上げられたことや、成人対象の不法な性的撮影物を所持、購入、保存、視聴すると、3年以下の懲役または3000万ウオン(約264万円)以下の罰金など、処罰を厳格化する内容となっている。

 福田氏は「DVや性暴力には、女性にも落ち度があったのではないかなど、被害者が責められてしまう風潮がある。そうではなく、加害者が悪いという意識を社会全体で共有して、被害女性を守っていかなければいけない」と指摘する。

 男尊女卑と言われる韓国社会は今後、どう変わっていくのか。