新型コロナウイルスによる肺炎のため、3月29日に70歳で亡くなった希代のコメディアン、志村けんさん(本名・志村康徳さん)に対して、芸能界やファンからは今なお惜しむ声がやまない。現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「エール」では、最初で最後の本格的なドラマ出演を果たし、あらためてその演技力が絶賛されている。そんな中で悲しい出来事も。志村さんが愛した夜の街で、感染経路の責任の“なすり付け合い”が起きているというのだ。

 志村さんは朝ドラ「エール」に1日放送の第25話と6日放送の第28話に登場した。出演シーンはどちらもラスト1分。志村さんのセリフが15分間のドラマを締める展開で、SNS上では“8時14分の男”として、大きな反響を呼んでいる。

 俳優の窪田正孝が主人公・古山裕一役を務める「エール」は、全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」などで知られる作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏をモデルに夫婦愛を描いたもの。

 志村さんが演じるのは、主人公に影響を与える西洋音楽作曲家の小山田耕三。過去に映画「鉄道員」(1999年)に出演したことはあるが、ドラマ出演はこれが最初で最後になった。

 2回とも短い出演だったが、渋い演技に「存在感が素晴らしい」などSNS上では視聴者の称賛の声があふれている。視聴率は、1日が21・2%と、同番組では2位タイとなる高い数字を記録。6日も19・7%と、注目度の高さをうかがわせた。

 だがその裏で、志村さんが愛した夜の街で、なんとも“悲しい騒動”が起きているという。

「志村さんが新型コロナに感染した経路はいまだに明らかになっていませんが、『連日のように通っていた夜の街で感染したのでは?』と噂されている。麻布十番や銀座、六本木などに足しげく通っていましたが、それら夜の街で働く女性やスタッフが、感染した場所をお互いになすり付け合う状況が生まれてしまっている」(都内のキャバクラ経営者)

 商売をしている以上、「ウチで感染したはずがない」と思いたいのは当然だろう。だからといって、別の街の店のせいにするのはいただけない。

 例えば、銀座のクラブに籍を置いているスタッフなら、常連客からコロナ感染を心配する連絡を受けると「銀座と言われていますけど、実は六本木みたいですよ」「麻布十番の行きつけの店らしいですよ」とか…。

 自分たちが働いている街とは違う場所での感染を吹聴している心ない関係者がいるというのだ。

「コロナの感染が拡大すればするほど、クラブやキャバクラ、ガールズバーなどへの風当たりはどんどん強くなっていますが、特に志村さんが亡くなってから世間の風向きが変わりました。特にそういった店に通わない人たちの目が厳しい。『お前らが志村さんを殺したんだ!』などと匿名の掲示板に誹謗中傷を書き込まれることは日常茶飯事で、実際に店に恐喝のような電話が来たケースもあった」(前同)

 緊急事態宣言が出た後には、営業中の店舗を非難する張り紙が貼られるなど“自粛警察”が問題になっているが、夜の街にも似たような問題が起きているわけだ。

 たとえ、新型コロナが終息しても“志村さんが亡くなった街”と認識されれば、事実でなくても遠のいた客足が戻ってこない可能性も高くなる。感染拡大の第2波、第3波も予想される中で、感染経路の噂を否定したくなる気持ちも分からないではない。だからといって、まるで責任のなすり付け合いのような騒動はいただけない。

 小池百合子東京都知事ら全国の首長が名指しで営業自粛を要請したことにより、風当たりは一層厳しくなった夜の街。緊急事態宣言も今月末まで延長され、休業を余儀なくされているクラブやキャバクラ、ガールズバーなどでは閉店を決断したところも続出している。

 志村さんが、こよなく愛した夜の街はだいじょうぶじゃない!?(視聴率は関東地区、ビデオリサーチ調べ)