やはり信頼、信用できるのは国産マスク――。大手電機メーカーのシャープが21日、三重工場で生産しているマスクを一般向けにネットで販売を始めたが、アクセス殺到でパンクした。また初代タイガー・マスクや獣神サンダー・ライガーらプロレスラーのマスクを製作した巨匠による一般向けマスクも瞬殺完売。マスク需要がピークを打ったとみられる中、新たに求められているのは質の高い国産マスクだ。

 品薄状態が続いていたマスクだが、コンビニやドラッグストアでは、実売機会が明らかに増えてきている。ネットや街中の露店でも大量入荷した中国製マスクを小分けして、販売しているところも多い。1枚当たりの単価も60~100円前後まで下がっているのが実情だ。

 そんな中、この日自社通販サイトで販売が始まったシャープ製のマスクは、アクセス過多でサーバーがダウン。スマホと連動する同社のIoT家電も一部の機能が利用できなくなるほどの混乱に陥った。

 同社は2016年に台湾の鴻海精密工業の傘下に入ったが、マスク不足に陥った2月にいち早く日本政府の要請に応じ、三重県多気町の液晶ディスプレー生産工場をマスク用に転換。先月から生産を開始し、政府へ納入していた。

 日本で販売されているマスクの約8割は中国製で、現在ネットや露店で出回っているのは作りが荒かったり、材質が薄かったりと粗悪品も多い。その点、シャープの生産したマスクは事細かに仕様が説明され、同社のロゴも刻印された。値段は50枚で3938円(送料・税込み)と一見、高いように見えるが、原材料費が高騰している中で、妥当な値段との評価で、求める人が殺到したワケだ。シャープ広報は「現在、1日の生産に見合わせて3000箱を販売。今後は1日1万箱の販売を目指すが、実現できる日は未定。そのために、機械など含め、生産のペースを上げていきます」と話している。

 一方、プロレスファンの間で“プレミアムマスク”となっているのは、プロレスマスクの巨匠・豊嶋裕司氏が製作した立体ストレッチマスクだ。

 プロレス、格闘技ショップの闘道館(東京・巣鴨)の泉高志館長がマスクの品薄状態を憂い、豊嶋氏に製作を依頼。今月18日に続き、2度目の販売となった21日も、用意した80セットのマスクが15分で完売する人気ぶりとなった。

 素材はライガーのコスチュームでも使用した伸縮性のある生地で、飛沫防止効果は高い上に通気性はバツグンだ。

「豊嶋さんはこれまで選手の使いやすさにこだわっていて、今回も一般の人向けなのでプロレス色を出す必要はなく、実用性を第一にした」(泉氏)
 それでも巨匠が手掛けたマスクは鼻から顎にかけてのラインは洗練され、どことなく覆面風だ。

「意識したワケではないようですが、ハヤブサさんのマスクに似ていますね」(泉氏)

 繰り返し使用できるとあって、値段はさぞ高いことかと思えば、1500円(税込み)で、2枚入りというから驚きだ。

「豊嶋さんはみんなが必要としているから、自分のブランドを値段に乗っける必要はない、と。正直、ギリギリのところです」(泉氏)

 完全なハンドメードで、一定数が完成次第、店で販売していく予定で、リクエストが殺到しているという。

 安倍晋三首相は全世帯に配布する布マスク2枚=アベノマスクで、マスク需要の抑制を図ったが、「もういらない」「無駄」と散々だった。市場は“量より質”に移行したともいえ、それはそれで争奪戦となっているようだ。