新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中でイベントの中止や延期が相次ぐ中、すでに延期が発表されていたフランスの映画の祭典「カンヌ国際映画祭」の主催者側が迷走している。

 南フランスのリゾート地として知られるコート・ダジュール沿いの都市カンヌで毎年開かれる同映画祭は、もともと5月12~23日に計画されていた。だが、新型コロナ感染の拡大を受け、主催者は先月、6月か7月に日程を再調整すると発表。「感染のピークは3月で、状況は好転するから時期を変更しても開催は大丈夫だろう」と踏んでいたのだ。

 ところが同国のマクロン大統領は今週、感染者が毎日数千人単位で増え続け、死者も1万6000人に迫る状況からロックダウン(都市封鎖)を5月11日まで延長することを決定。主催者は延期発表を撤回し、夏までの開催は無理と判断した。

 同映画祭は終戦翌年の1946年に始まり、48年と50年に予算の都合で中止されたことを除き51年以降は毎年開催。今年で73回を数える。主催者側は「例年のような形での開催はできないだろう」としながらも、中止だけは避けたいとしている。

 米芸能誌「バラエティー」によると、秋開催の可能性についても検討しているが、9月には欧州のもう一つの主要映画祭であるイタリアの「ベネチア国際映画祭」や、スペインの「サン・セバスチャン国際映画祭」、さらにはカナダの「トロント国際映画祭」など目白押し。

 10月にはカンヌでエンターテインメントとコンテンツ関連の国際見本市「MIPCOM」が予定されており、同市での開催は不可能だという。

 2018年には是枝裕和監督の「万引き家族」が最高賞パルムドールを受賞したことも記憶に新しいカンヌ映画祭だが、他のイベント同様に開催は流動的だ。