感染者を乗船させたまま世界をさまよう“コロナ漂流船”

2020年04月01日 17時00分

いまだ上陸できない「ザーンダム」(ロイター)

“コロナ漂流船”の悲劇はまだ終わらない――。日本のコロナパニックの引き金となったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が先週、ようやく横浜港を後にした。同船をめぐる新型コロナウイルスによるクラスターは712人の感染者と11人の死者を出したのは記憶に新しい。その一方、世界の海にはまだ多くの豪華客船が感染者を乗船させたまま、寄港先を求めて“漂流”している。

 オーストラリアのメディア大手テン・ネットワークのニュースサイト「10デーリー」によると、同国東部・ニューサウスウェールズ州の政府は、シドニー沖で下船許可を求めて停泊している9隻のクルーズ船のうち、同州で船籍登録のない6隻について、すぐに同国の水域を離れるよう命じた。だが3月31日現在、まだ1隻も退去令に応じていないという。

 退去令を発令した同州のミック・フラー警察長官は「停泊中のクルーズ船には、私たちの州の住民ではない数千人の乗客がいる。もし彼らを受け入れれば、医療現場で不必要な混乱を招くことになる」と述べた。その上で、豪州政府も停泊中の外国船籍のクルーズ船に対し母港に帰るよう勧告していると続けた。

 これらの船はシドニー港からの乗客を乗せて出航し、クルーズを終えて戻って来たもので、1隻あたり2000~3000人が乗船している大型客船ばかりだ。同州に登録されている3隻について州当局は「入港の新たな方法が決まった後」に乗客の下船を認めるとしている。だが、残る6隻は悲劇の漂流を続けるしかなさそうだ。

 英紙ガーディアンによると、同州政府の厳格な対応は3月19日にシドニーに入港したクルーズ船「ルビー・プリンセス」の乗客約2700人を検査の結果が出る前に下船させた大失態の反動だという。同船を下船後、元乗客のうち400人以上の新型コロナウイルス感染が判明したためだ。

 ニューサウスウェールズ州に呼応するように、西オーストラリア州政府も先週、パース近郊の港に着岸したクルーズ船3隻の下船を拒否。27日になって同州は乗客のうち州の住民約200人については約20キロ沖のロットネスト島で隔離することを決定。欧州からの外国人客はパースから空路で帰国させると発表した。

 一方、米クルーズ会社「ホーランド・アメリカ・ライン」の豪華客船「ザーンダム」も死者4人を含め、多くの新型コロナ感染者とみられる乗客・乗員を乗せたまま、寄港先を求めて航行を続けている。だが、これまでチリなど南米各国から入港を拒否されている。

 米ブルームバーグニュースによると、同船には乗員・乗客1829人が搭乗していたが、乗員116人と乗客73人がインフルエンザのような症状を訴えたため、同社は3月22日に姉妹船「ロッテルダム」を派遣。人手不足となった乗員の負担を軽減させるため、健康な乗客約800人のほか多くの乗員をロッテルダムに移し替えた。

 その後、30日にパナマ運河を通過した両船はフロリダ州南部・フォートローダーデール市の港に向かっているが、ロン・デサンティス同州知事は「フロリダ州の住民以外の乗客を受け入れることは避けたい」として、下船には消極的だ。また、同市のディーン・トランタリス市長も「完全な検疫ができない現在の状況では下船はあり得ない」とツイートした。

 そんな中、ダイヤモンド・プリンセスなどを運営するクルーズ最大手のカーニバル・コーポレーション(米国)など、世界のほぼ全てのクルーズ会社は運航を取りやめている。