「サブマリンキャッチャー」を覚えてますか。UFOキャッチャーと水槽が合体し、景品として生きた伊勢エビやカニが使われたゲーム機だ。2000年に発売されて話題になり、全国で広まった。「過去に見たことはある」という人も多いはず。本紙記者もどこかのゲームセンターで見た記憶はおぼろげにあるが、正確な場所などは覚えていない。今はどこにあるのか? 追ってみた。

 サブマリンキャッチャーについては「動物愛護団体のクレームを受けて、ブームは下火になったし、もう存在しないんじゃない?」(40代男性)という都市伝説めいた話もチラホラ。現存しているのだろうか。

 開発・発売元の「ユー・エス産業」(大阪市大正区)で2000年当時に販売を担当した男性から話を聞いた。

「たくさん抗議が来たために販売をやめたと思っている人も多いと思う。けど、売れなくなっただけ。警察から指摘とか法的な問題は全くない。発売した年にだけ230台売ってそれで終わり」

 同社で開発する他のゲーム機と比較しても、販売数は大きく変わらないという。

「サブマリンキャッチャーは、ただの水槽を入れたクレーンゲームだよ。発売前から中国や米国では『ロブスターキャッチャー』が売られていた。一時的にテレビが取り上げてブームになっても、ほとんどの店は半年で(稼働を)やめた。エビが死ぬし、メンテナンスが大変。そのくせ、他のぬいぐるみのクレーンゲームと売り上げは同じだった」と語る。

 クレームが届いた事実はあったのか?

「会社には一般の方から電話で抗議が10件くらいきた。動物愛護団体からの文書も1通届いた。請求書だった。寄付しろって。寄付したら何も言われなくなった」

 倫理的問題ではなく、単純に“ドル箱機”でなかったからブームは下火になったようだ。冒頭の都市伝説も間違いだったわけだ。

 だが、そんな機体をまだ維持しているのがゲームセンター「インターワールド」。担当者は「戸田店(埼玉県)と伊勢崎店(群馬県)に各1台あります」と話す。2台とも販売開始時期に購入し、伊勢崎店はずっと置いている。戸田店は系列店を経由してやってきた。今でも伊勢エビを入れて1回100円で遊べる。子供より大人が遊ぶという。

 まだ置いている理由は「物珍しいからです。店頭にあるので、いちげんさんが入ってきても興味を持ってもらえます」とのこと。「エビの世話や、部品が壊れたり、手間のほうが多いですよ。儲かるかというと、それより話題になればいいな。うちは壊れるまでは使おうと思っています」とも。

 お金を入れてからエビが動きだして取れなかったりもするが、逆に“景品”の方からクレーンにしがみついてきたりもあるとか。懐かしさから訪れる客もいる。

 ゲーセンではないが、道の駅ちくら「潮風王国」(千葉県南房総市)にもかつては置かれていた。支配人は「半年前に完全に壊れて、廃棄してしまった」と明かす。14~15年前に都内のゲーセンで扱わなくなったものを、知人を通じて安く譲ってもらったという。

「伊勢エビは抗議が来るかもしれないと思って、抵抗感を少しでも減らそうとサザエで始めてみた。サザエは普通に道の駅で買うと1個300円(時価)。ゲームは1回200円で失敗しても、取れるまでずっとやる人もいた。普通に買ったほうが安いんですよね(笑い)」

 ユー・エス産業担当者は「今後は生き物を使ったゲームを作る予定もない。作っても売れないですから。確かじゃないけどサブマリンキャッチャーは大阪、九州にもあると聞いたな…」と話す。情報を求む。