亡くなった女優の八千草薫さん(本名・谷口瞳)の原点は宝塚だ。2014年4月に開かれた宝塚歌劇団100周年記念公演「時を奏でるスミレの花たち」には八千草さんのほか、寿美花代(87)、有馬稲子(87)、鳳蘭(73)、大地真央(63)、黒木瞳(59)、真矢みき(55=現真矢ミキ)らOGも出演。

 芸能関係者は「八千草さんはレジェンド中のレジェンド。いつも鳳さんがOGの“まとめ役”みたいなところがあるのですが、この時は鳳さんも黒木さんも真矢さんも直立不動でしたね(笑い)。八千草さんは、とても楽しそうにしていました」と明かす。

 八千草さんは、がん宣告を受けた時の心境について「文藝春秋」8月号で「あ、とうとう来たんだ」「自分の『死』が近付いたことを感じました」と述べている。そこに悲愴感はなく、運命に身を任せて今を全力で生きるといった心持ちだ。

 別の芸能関係者によれば「実は今年行われた宝塚OGの同窓会にも顔を出されたそうです。普段こうした集まりに参加するのは珍しい方なので驚きました」という。

 女優としても唯一無二だった。遺作になったのは現在放送中の「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系)。前作「やすらぎの郷」に九条摂子役で出演したが、体調面を考慮して「やすらぎの刻」は降板になったが…。

 28日、取材に応じた主演の石坂浩二(78)は「ある時、八千草さんが撮影現場にやって来て、その場で(脚本家の)倉本聰さんが八千草さんの出演シーンを作ったんです。6シーンくらい撮りました」と回想し「正直で、ごまかさない人。『このセリフが(頭に)入ってこない』『このセリフが言えないのよね』などと隠さずにおっしゃっていました。台本を変えることはなさらず、真っすぐ(台本に)向かっていました。セリフの一つひとつをかみしめなければならないことを教わりました」と涙ながらに語った。

 八千草さんといえば「日本のおかあさん」というイメージを持つ人も多いが、石坂は「母親ではない。マドンナですよ」と表現。「憧れの人で、初めてお会いした時はドキドキして、息ができないくらいでした」と懐かしんだ。