ヘアヌードの仕掛け人として知られ「毛の商人」の異名を持つ「モッツ出版」代表・高須基仁さんが17日夜に肺がんのため亡くなっていたことが18日、分かった。71歳だった。かつて女優の天地真理(67)や藤田朋子(54)を脱がせ、時にはトラブルも起こしてきた名物出版プロデューサーだった。学生運動で凶器準備集合罪などの疑いで逮捕されたことを誇りとし、バイオレンスな雰囲気も持ち合わせていたが、他方で「テロよりエロ」を標榜した“反戦の人”でもあった。そんな高須さんの素顔とは――。

「ビールでいいだろ?」

 東京・新橋にあるモッツ出版を訪れると開口一番、お酒を勧めてくる。高須さんはそんな人だった。

 死因は肺がん。最後は脳に転移していた。今年5月に体調不良を訴え、病院を訪れた時にはすでに手遅れ。医師からは「余命数週間」と告知されたそうだが、3か月以上も生き延びた。肝臓は最後まで丈夫だった。

 以前から「痛風で足が痛い」とこぼしていたが、実はがんであることを隠すためのうそだった。本人のブログも亡くなる前日の16日まで更新され、「うな重を平らげた」と書いてあるが、それも強いイメージを貫くためのものだった。

 静岡県掛川市出身で中央大学時代は学生運動に傾倒。卒業後は玩具メーカー「トミー(現タカラトミー)」でヒット商品「プラレール」「UNO」などに関わった。42歳のころに胃がんが判明。胃の3分の1を切除し会社を辞め、起業したのがモッツ出版だった。

“脱がせ屋”として名をはせた高須さんが手掛けたヘアヌード写真集は天地、藤田のほか、大西結花(51)、島田陽子(66)、西川峰子(61)、女流棋士・林葉直子さん(51)など大物ぞろいだ。

 藤田とは出版をめぐって訴訟沙汰に発展したが、高須氏はあえてそれをオープンにし、マスコミに情報提供した。当時はトラブルをひた隠すのが常だっただけに、それを話題に変える手法は一部で批判も浴びた。

「今で言う炎上商法の先駆者だ。世間から批判されるのも想定内。話題作りは抜群だった」(高須さんを知る人物)

 裁判で負けても、なんてことはない。ある時、記者が「いくら払うんですか?」と聞くと、高須さんは「あー、あれか。問題ない」とニヤリ。払うつもりはなかった?

 高須さんのトレードマークと言えば、学生運動の時に身につけていたヘルメットと拡声器。全学連の一員として丸太を抱えて旧防衛庁に突っ込み、凶器準備集合罪などの疑いで逮捕されたこともある。

 新宿ロフトプラスワンで開く主催イベントでは、一般人と口論になり、その場でマイクを投げつけ、踏みつける“凶暴”な一面もあった。関係者いわく「ブチ切れたら、手がつけられない」。その時の暴行動画はのちに高須さんの紹介VTRとなった。

 一方で、毎年8月15日の終戦記念日には、ロフトプラスワンで反戦イベントを欠かさず開催。今年はそれが高須さん最期の公の場となった。高須さんを知る人物の話。

「生涯反戦を訴え続けてきた。高須さんのイベントには右翼に左翼、ヤクザから警察官まで集まる。それをまとめ上げられるのは高須さんしかいない。『テロよりエロ』を標榜し、過激なイベントを仕掛けてきたのも、根っこには平和主義があった」

 遺作は最新刊「ボウフラが女肌(はだ)を刺すよな蚊になるまでは、泥水呑み呑み浮き沈み―美女が脱ぐ瞬間Part2―」(展望社)。表紙の高須さんの絵は孫娘が描いたもので、いたく気に入っていたという。

 子供と孫に囲まれ、高須さんは天国に旅立った。太い人生だった――。