派遣型マッサージ店の女性セラピストAさんに乱暴したとして強制性交罪に問われた元俳優新井浩文被告(本名パク・キョンベ、韓国籍=40)の初公判が2日、東京地裁で開かれた。新井被告は起訴内容を否認し無罪を主張。検察側に徹底抗戦する構えを見せた。公判後、本紙が緊急取材したところ、新井被告が利用した店舗と依頼した弁護士の素性が判明。“余罪”も見え隠れする元演技派俳優が、本気で無罪をつかもうとしている――。

 黒のスーツで入廷した新井被告は「暴力は一切やっていない。同意があったと思っている」と起訴内容をキッパリと否認し、無罪を主張した。

 起訴状などによると、昨年7月1日午前2時23分、新井被告が当時住んでいた東京・世田谷区内の自宅マンションで施術が始まった。新井被告自身は上半身裸で紙パンツ姿。158センチ、45キロのスレンダーな美人セラピストAさんを初めて指名した。アロマオイルマッサージで90分総額1万8500円のコースだったという。

 マッサージ開始から1時間ほどたった同3時25分ごろから、新井被告の行為はどんどんエスカレートしていった。Aさんの服を脱がせて胸を1分弱ナメまわしたうえで、手マンを30秒弱。続けてベッドに押し倒し、挿入した。しかも、ナマだ。

「気持ちいい…」

 無心で腰を振り続けたが「中に出さないで!」と拒否されたため、Aさんの腹の上に射精した。フィニッシュした後には「悪いことしちゃった」と“口止め料”として5万円ほどをAさんのバッグに突っ込んだ。Aさんは8月28日に警察に被害届を提出。翌月に退店したという。Aさんは行為中、「ずっと抵抗を続けていた」などと証言。新井被告への実刑を求めた。

 一方、弁護側は「暴行・脅迫を用いておらず、強制性交罪は成立しない」と無罪を主張した。新井被告は事件後、示談金1000万円と2000万円を一度ずつ提示したが、拒否されたという。

 また過去に複数回、別の派遣型店のセラピストと性交したことも明かされた。

「その成功体験で調子に乗って“暴走”した。立件することは難しいが、ほかにも“余罪”はありそうだ」(捜査関係者)

 Aさんは同店について、健全店で性的サービスの禁止を明示しており、施術中もTシャツ&長ズボン姿でセクシーな衣装ではないと述べた。法廷では店舗名など、店に関するそれ以上の情報は伏せられたが、本紙の取材でその詳細が判明した。

「都内に拠点を構える人気出張マッサージ店『X』で、セラピストは30代前後の美女ぞろい。ほかにも著名人が利用していたようだ。健全店と分かるのに手を出したということは、新井被告はAさんがよほどタイプで、かつアダルトビデオの見過ぎか、性欲が激烈で抑えが利かなかったから。もっとも、芸能活動していた時からスケベであることは隠していなかったが」(同)

 日本において、刑事事件の有罪率は99%とされる。起訴されると無罪になることはほとんどない。強制性交罪の法定刑は、5年以上20年以下の懲役。有罪なら実刑判決の公算が大きいが、新井被告には強力な後ろ盾がいた。それが弁護士だ。

「新井被告と同じ韓国籍で、在日コリアンが被告となった刑事事件の弁護のエキスパート。これまで複数回、無罪を勝ち取っている。昨年も刑事事件で、一審の有罪判決をひっくり返して逆転無罪に持ち込んだばかり。同胞だから新井被告も『助けて!』と駆け込んだのだろう」(法曹関係者)

 Aさんは法廷で「入れないで!」と抵抗したと証言したが、新井被告の弁護士は、捜査当局による供述調書(昨年11月付)には「そういった記述はなかった」と指摘。Aさんの見解の矛盾を突こうとした。さらに、検察側の質問には「異議あり!」と猛然と食ってかかり、裁判官にその質問の却下を認めさせる場面もみられた。

 本紙は、この弁護士が所属する法律事務所を通して取材を申し込んだが、対応はなかった。

 次回期日は今月26日で、被告人質問が行われる予定。法曹界は実刑とみる向きが多いが、新井被告に果たして勝算はあるのか――。

【被害者の抵抗の立証も争点】新井被告の裁判に“影響”を及ぼすのか注目されるのが、3月に性犯罪事件での無罪判決が相次ぎ、全国各地で女性たちが抗議の声を上げた一連の流れだ。

 3月には福岡地裁久留米支部で準強姦(現準強制性交)事件で被告に無罪が言い渡されると、静岡地裁浜松支部(強制性交致傷事件)、名古屋地裁岡崎支部(準強制性交事件)、静岡地裁(強姦=現強制性交=事件)で無罪判決が続いた。

 名古屋地裁岡崎支部の判決では、「性交は被害者の意に反するものだった」としながら、「抗拒不能状態にまでは至らなかった」として、抵抗の余地があったと認めた形となった。静岡地裁浜松支部の件では、「頭が真っ白になった」被害者について判決は、被告から見れば「明らかにそれと分かる形での抵抗はなかった」と認定した。

 こうした判決の根拠とみられるのが、性行為における「同意」と被害者による「抵抗」の法的評価。刑法では強制性交について、「暴行または脅迫を用いて」行われた行為を犯罪とし(13歳以下は別)、準強制性交の場合は「心神喪失もしくは抗拒不能に乗じて」という要件があり、それが明白だと裁判官が認定しなければ、有罪へのハードルが高くなり得る。事実は認定しても「犯罪」ではないとされたのが前出の無罪例だろう。

 新井被告は被害者の「同意」を主張しており、公判では相手の「抵抗」の立証も争点になりそう。一方で一連の無罪判決で女性たちはデモなどを通じて司法への怒りの声を上げており、こうした世論も踏まえた判決になるのか注目される。