「カラテカ」入江慎也が仲介した反社会的勢力の忘年会に吉本興業所属の芸人が出演した、いわゆる闇営業問題がここ数か月、芸能界の話題をさらった。当初は「反社会的勢力との交際」が問題となっていたが、いつしか吉本のパワハラ体質や、所属芸人と書面による契約を交わしていないことなどに話題が変わっていった。

 ただ契約について言えば、売れていない芸人に吉本がギャラなどほとんど払えないのは当たり前だろう。今回は吉本の問題だったためお笑い芸人がクローズアップされたが、俳優や歌手、モデル、タレントなど、どんなジャンルでも、芸能界は売れていなかったら収入がほとんどないのが当たり前の世界だ。

 先日、女優・田中道子をインタビューする機会があった。田中は現在放送中の「偽装不倫」(日本テレビ系)に出演したほか、NHK大河ドラマ「西郷どん」、フジテレビ系の月9ドラマ「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」などにも出演。今ではトップ女優として活躍しているが、下積み時代は苦しい生活を送っていたという。

 現在の所属事務所にスカウトされ、それまで住んでいた地元の静岡から上京してきた。当初はモデルとして活動していたが、本人は「上京後は仕事もなくて大変でした」と振り返る。

「最初は貯金を切り崩しながら生活してましたね。東京で初めて住んだのが池袋。東京のことをよく知らなかったから『サンシャイン水族館の場所だ』くらいしか、池袋のことを知らなかった」

 でも実際に住んだのは、JRの線路沿いにあるラブホテル街のど真ん中。「一軒家を3人でシェアして住んでました。ほかの2人は全く知らない子で、1人はタイ人。線路沿いだから朝4時ごろ、電車が通るとガタガタ揺れて目が覚める(笑い)。食事も100円のうどんとか、そういうものを食べてました」

 田中はその後、2013年に「ミス・ワールド日本代表」に選ばれ、モデルとして一本立ち。16年からは女優として活躍しているが「ミス・ワールドのグランプリを取るまでは、一体どうなるのか不安でした」と実感を込めて話した。

 だが下積み時代について、事務所への恨みは全くない。「それは私が仕事を全く持ってこれなかったから。オーディションとかもあったけど、引っかからない。それは私が悪いんです」

 一方、お笑い芸人も、売れないことに不安を抱えたまま生活していることに変わりはない。ただ「お笑いには賞レースがある。M—1グランプリやキングオブコント、R—1ぐらんぷりなどで優勝、もしくはファイナリストになったら、それなりに生活できる収入は得られる。その意味では、ヒット作やヒット曲に出会わないと世に出られない俳優や歌手より、チャンスは転がっているはず」(芸能関係者)。

 ベテラン芸人の西川のりおは週刊新潮の取材に対し、お笑い芸人について「うまくいったら一獲千金やけど、うまくいかんかったら野垂れ死に。そういう覚悟でこの世界入ったんちゃうんか」と語った。売れるまでは生活できないが、売れれば大金持ちになるチャンスがある芸人に、一般企業のような契約を迫る方がナンセンスのような気がするが…。