第161回芥川賞・直木賞が17日に発表され、芥川賞に「むらさきのスカートの女」(「小説トリッパー」春号)の今村夏子氏(39)、直木賞は「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」(文芸春秋)の大島真寿美氏(56)がそれぞれ受賞した。

 今回の芥川賞で注目は「百の夜は跳ねて」(新潮6月号)で2度目のノミネートとなった社会学者の古市憲寿氏だった。落選の一報に「ちーーーん。」とツイート。続けて「まただめだった!!!」とつぶやいて無念さを表した。

 選考委員の小川洋子氏は講評で古市氏の作品について「マルをつけた選考委員もいらして、長い議論になりました。いろんな素材を集め、パッチワークのようにはめこめば小説になるんだという手つきが見え隠れしていました」とテクニックが目についたと話した。

 さらに、小川氏は「書こうとしていることは分かるけれど、卑屈な主人公が、最後に劇的な変化をする過程が読み切れなかった」と指摘。古市氏の作品を評価した選考委員は「都会的な手触りがあって、今の東京という都市を、リアルに描き出しているんじゃないか」と主張したというが、援護がなかったという。

 ニコニコ生放送で長年にわたり同賞発表番組の司会を務めるITジャーナリストの井上トシユキ氏は「古市さんの作品がパッチワークとはまさにその通り。いつか見た映画、いつか読んだ小説を思い起こさせるんです。その手法がダメということはないが、読後に残るものがない。文章はうまくなっていました」と語った。

 芥川賞を意識してなのか、最近の古市氏は発言が丸くなったと言われている。かつては炎上することも多かったが…。

「公共の敵みたいだったのが今は器用で優しいお兄さんになっている。社会に迎合せず、かつてのように無頼なままでよかったんじゃないか。その方が文学らしいじゃないですか」(井上氏)

 炎上上等の方が小説もフィーバーするかも。