宮本亜門氏 がん手術で心境変化「他人の痛みを分かるようになった」

2019年06月12日 16時44分

宮本亜門氏(左)と高田賢三氏

 演出家の宮本亜門氏(61)が12日、都内で行われたオペラ「蝶々夫人」の制作発表会見(公益財団法人東京二期会主催)に出席した。宮本氏は先月22日に前立腺がんの摘出手術を受け今月1日に退院したばかりで、それ以降、初の公の場となった。

 長崎を舞台に、没落した藩士の娘で芸者の蝶々さんと米海軍士官ピンカートンとの悲恋を描く。いわずと知れた名作だ。

 宮本氏は「昔から演出したかった作品。ドレスデンの歌劇場でやれると聞いて体が震えた。蝶々夫人ほど愛された作品はないが、これほど上演しにくい作品もないといわれる。僕なりの新たな視点を入れたい」と意気込んだ。

 テレビの健康番組の企画で今年2月に人間ドックを受診した際、ステージ2のがんが発覚。「中国での仕事がキャンセルになって、2か月半スケジュールが空いた。そこで偶然、がんが見つかった。ラッキーだった」と振り返る。

 続けて「体調は大丈夫だが、初めての手術で全身麻酔をしたので、もうひとつ体力が戻っていない。前立腺がんは完治すると聞いたが、せっかちな性格なので、水前寺清子さんの歌みたいに3歩進んで2歩下がりながら、焦らず時間をかけて治そうと思う」と話した。

 オペラの準備は2、3年前から始まっており、すでにほぼ固まっている。他の仕事にもほぼ支障はない。「あさってからニューヨークに行く。仕事はノンストップで動いている。再来週、PSA検査(前立腺がん検査)をするので、悪い結果が出ないことを願う」

 病気を通して得たものもあった。「少し考え方が変わった。自分に時々、お疲れさまと言えるようになり、他人の痛みを分かるようになった。誰しも死はいつ訪れるか分からないが、いま生きているじゃないかということを、本気で死ぬまで大切にしていきたい。舞台を通してできることが多いと思う」

 3年前から乳がんで闘病し入院中の継母と「痛いよね、つらいよね」と励まし合い、膀胱がんの経験がある父親からは涙ながらに励まされた。街でも「宮本さん、大丈夫?」と励まされることが少なくないとか。「おばちゃんから声をかけられるが、股間ばかり見られるのが困る」と笑わせた。

 衣装デザインには「KENZO」ブランド創業者の高田賢三氏(80)を迎える。宮本氏は「僕は賢三さんの服をずっと着ていた。特に“違いがわかる男”(ネスカフェのCM)のころかな。今回『デザインしてくれないんですか』と甘えた声でお願いした」と説明した。

 一方の高田氏は「8月のバカンスでギリシャに行った際、港でたまたまバレンティノ(ガラバーニ)さんと会ったら、『9月に日本でオペラの衣装をやるんだ』(ソフィア・コッポラ演出の『椿姫』日本公演)とうれしそうに言っていた。そこに亜門さんから話があった。難しい仕事だけど面白い。亜門さんの希望通りのものができるとうれしい。頑張りたい」と語った。

 公演はザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー・ドレスデン)、デンマーク王立歌劇場との共同制作で、10月3日から6日まで東京文化会館で、10月13日によこすか芸術劇場で上演される。来年には両歌劇場でも上演が予定されている。