警察庁特別防犯対策監を務める俳優で歌手の杉良太郎(74)が7日、東京・鮫洲運転免許試験場で自らの運転免許証を返納した。高齢者ドライバーによる交通事故が相次ぎ社会問題となっている中、自ら率先して行動を起こして一石を投じると同時に、同じく社会問題化している虐待、それに対する児童相談所のあり方についても警鐘を鳴らした。

 8月が免許の更新時期だったが「ちょっとでも不安があれば返納した方がいいかなと。8月なんですけど前倒しして返納しようと」。こう話した杉は免許証の代わりに、運転経歴証明書を交付された。

 現時点で運転に支障をきたすような健康問題があるわけではない。それでも返納したのは「目の反応とかが以前とちょっと違うな、と感じました。運転に関しては全然問題なかったんですけど、反応に関してですね。これ以上の再交付は無理だと自分で判断しました」と明かす。

 妻の伍代夏子に返納を伝えると「ウチはあっさりしているので『いいんじゃない』と(言われた)。自分(伍代)は(更新を)忘れていて失効しちゃったので、夫婦揃って免許証はないです」。

 5月には、東京・池袋で、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)の乗用車が赤信号の交差点に進入して通行人を次々とはねるなどし、松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)が死亡、8人が重軽傷を負った。

 今月4日には、福岡市早良区の交差点付近で亡くなった81歳のワゴン車が暴走し9人が死傷。6日には奈良県生駒市で70歳女性が死亡事故を起こすなど高齢者ドライバーによる事故が相次いだ。杉が免許証を返納した7日も鳥取県米子市で75歳男性の軽乗用車が踏切で列車と衝突し死亡した。

 高齢者による事故が続発している中、自身の返納が「考えるチャンス、きっかけになればいいなと思います」と話した。
 大きな影響力を持つ杉だけに、高齢者以外にも効果がありそうだ。

 ある地方議員は「車がなければ生活が不便な地方の高齢者は免許証を失うこと=運転できない人になる。『もう俺は一人前じゃないのか』と自信喪失するのを恐れています。実際は村落でも自転車と宅配で生活はできるし、すごい過疎地なら事故は起きません。杉さんの返納によって、返納=自己を客観視できる成熟した人間という流れができるかもしれません」と語る。

 また、15歳の時からボランティア活動を続け、積極的に刑務所を慰問して家族の絆の大切さを説いてきた杉は、虐待問題にも黙っていられなかった。札幌で2歳の女児が母親とその交際相手から虐待を受け、衰弱死したとされる事件を念頭に置いて「児童相談所は何をやっているのかと思いますよ」と切り出した。

 この事件では近隣住民からの通報があったにもかかわらず、児童相談所は被害女児や傷害容疑で逮捕された母親にもなかなか面会できず、立ち入り調査も警察への援助要請も行わなかったことが発覚している。

 杉は「権限も相当持っている。児童相談所はダメ。言い訳の後出ししてもダメだね。それじゃあ児童相談所はいらんでしょ」と痛烈に批判した。