沖縄で開催されていた「島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭」が閉幕した21日、主催の吉本興業が記者会見を行い、教育関連の映像やアプリの配信を手掛ける新会社をNTTと共同で設立したと発表した。注目は、アプリ制作を請け負うスタッフにNHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」のプロデューサーが名を連ねたこと。吉本とチコちゃんのタッグに注目が集まるかたわら、「貧乏くじを引いたのはフジテレビ」と言われている。

 新事業のコンセプトは“遊びと教育”。国内外の子供向けにスマートフォンやタブレット端末でゲームなどを楽しみながら学習できる仕組みをつくるというもので、2019年度内に提供を始めるとしている。

 新会社名は「ラフ&ピース マザー」で本社は沖縄県那覇市。映像の多言語対応を進め、アジアを中心とした海外への配信にも力を入れるほか、沖縄県内に、アプリの世界観をリアルに体験できるアトラクション施設を建設する計画もある。

 新会社には吉本興業、NTTの出資に加え、日本文化を海外に売り込む官民ファンド「クールジャパン機構」も最大100億円を拠出する。それぞれの出資比率は公表していない。社長には、吉本興業の生沼教行氏が就任する。

 21日に行われた会見には吉本興業の大﨑洋会長、NTTの澤田純社長、クールジャパン機構の北川直樹社長らが出席。大﨑会長は「世界の子どもたちに、夢や笑いを届けられる国産のプラットフォームを作る」と意気込みを語った。

 気になるのは、どんな内容のアプリになるのかということ。大﨑会長は「吉本には900人の社員と6000人の芸人がいる。まあ6000人といっても半分は犯罪予備軍なので、実際は3000人くらいですが」とジョークを飛ばしながらも、吉本が誇るお笑い芸人をアプリに登場させる考えを明かした。

 注目はコンテンツ制作を請け負う人物で、会見には2人が登場した。1人は、デジタル技術を活用し子供たちに創造的に学ぶ場を作る会社「CANVAS」の石戸奈々子社長。そしてもう1人は「スチールヘッド」代表取締役の小松純也氏。実は「チコちゃんに叱られる!」のプロデューサーだ。

 小松氏はもともとフジテレビで“希代のヒットメーカー”と言われ、「ダウンタウンのごっつええ感じ」のほか、「笑う犬の生活」など一連の「笑う犬」シリーズなどの人気番組を手掛けた。

「そんな小松氏をフジテレビは2015年、共同テレビに出向させた。そのころすでに視聴率の低迷が始まっていたフジは当時、『迷走してワケの分からない人事異動を繰り返している』などと言われたけど、周囲からは『小松氏の出向もその一つ』と見られていた」(芸能プロ関係者)

 共同テレビに出向したことで、小松氏はフジ以外の番組を制作することも可能になった。

「そういった流れで生まれたのが『チコちゃんに叱られる!』です。こんな面白い企画をNHKに取られてしまい、業界内では『フジは何をやってるんだ』と言われてましたね」(同)

 共同テレビへ出向しても立場はフジの社員のままだったが、小松氏は今年3月31日付でフジを退社。独立して立ち上げたのがスチールヘッド、というわけだ。

「吉本の新事業のコンテンツ作りに『チコちゃんに叱られる!』を作った小松氏のノウハウが生かされるのだから、どんなものができるのか注目されている。これだけの人物を手放したフジだけが貧乏くじを引いた格好ですね(笑い)」(同)

 会見で小松氏は「住みます芸人と一緒に街作り」など、早くもアプリの企画を披露。これだけではなく「100以上の企画、制作が進んでいる」と語った。新事業に注目が集まりそうだ。