新元号「令和」情報漏洩 疑われた面々

2019年04月03日 11時00分

新元号を発表する菅官房長官(ロイター)

 平成に続く新時代の名称は「令和」と決まった。新天皇の即位と改元まで1か月となった1日、日本中が固唾をのむ中で記者会見した菅義偉官房長官が、額に入れた墨書を掲げた。この新元号選定で、政府が万全を期したのが事前の情報漏れ防止策だ。他の候補も含め一部でも漏れれば、商標登録出願や改元手順に混乱を招く可能性がある。大正や昭和、平成も激しいスクープ合戦が繰り広げられてきた舞台裏の歴史がある。そして今回の改元で、記者たちがターゲットにした“漏らしそうな”関係者とは――。

 菅官房長官は事前に考案を委嘱した国文学、漢文学、日本史学、東洋史学の専門家の名前を明かすことはなく、この日、6つに絞られた候補の意見を聞く有識者会議には、日本民間放送連盟の大久保好男会長(日本テレビ社長)、上田良一NHK会長、日本新聞協会の白石興二郎会長(読売新聞グループ本社・代表取締役会長)ら計9人をメンバーに選んでいた。

「NHK、民放連、新聞協会のトップ3人を入れたことで、加盟する大手マスコミ各社は事前に新元号案や決定案を知ったとしてもトップが漏らしたのではないかと邪推されるため、報道を抑える狙いがあった」(官邸関係者)

 だからといって、各社がスクープを諦めていたワケではない。狙われたのは、衆参副議長だ。有識者会議後、菅官房長官は衆院議長公邸を訪れ、大島理森衆院議長、赤松広隆衆院副議長、伊達忠一参院議長、郡司彰参院副議長から意見を聴取した。

 この聴取で、物議を醸していたのが赤松氏だ。

「副議長で籍は外れているものの立憲民主党の赤松氏は携帯電話を取り上げられることに『情報漏れを前提に対応するとは許せない』とキレて、候補に安倍首相の“安”の字が入っていたら反対すると息巻いていたといいます」(自民党関係者)

 また郡司氏も赤松氏の子飼いと言われ、官邸は赤松―郡司ラインからの情報漏れを警戒していたが、結局、携帯電話は持ち込まれ、菅氏の聴取中には電話が鳴っていたという。赤松、郡司両氏はさすがに応対することはなかったようだが、「あり得ない」(官邸筋)と禍根を残した。ちなみに最終6案には赤松氏の反対を危惧してか「安」の字はなかったようだ。

 最終決定する臨時閣議の前には、全閣僚会議が首相官邸で行われた。

「桜田義孝五輪相、平井卓也科学技術相、片山さつき地方創生相あたりが口が軽そうだと各社、狙っていました」(同関係者)

 しかし、有識者会議のメンバーを含め、菅官房長官の会見まで官邸内に“軟禁”され、部屋周りも携帯やスマホの電波を遮断するジャミング装置が設置される念の入れようだった。結果的に事前にスクープされることはなかったが、緊張が走った瞬間もあった。

 有識者会議が終わった直後、国民民主党の牧義夫衆院議員がツイッターで「新元号『悠久』って本当ですか?」とつぶやいたのだ。

「牧氏は故鳩山邦夫元総務相の秘書出身で、事務所の先輩に当たる岩屋毅防衛相や吉川貴盛農水相など“鳩山グループ”はネットワークが広い。悠仁さま(秋篠宮家長男)の『悠』の字で、さもありなんという2文字でザワつきました」(自民党議員秘書)

「悠久」は普通名詞で人名にも使われているため可能性はゼロに近かったが、その後、安倍首相が発表した新元号の談話の中で「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然」と偶然にも「悠久」の2文字が…。この談話の内容が事前に漏れ、真偽不明のまま伝わったのか? 牧氏の事務所に問い合わせたが、回答はなく、ツイートも削除された。

 また、事前にNHKに漏れていたのではないかとの疑惑が浮上。菅官房長官が「令和」を発表してからわずか数分後、NHKのスタジオにいた岩田明子報道局政治部記者兼解説委員は、詳細に解説した。

 野党関係者は「事前に知っていなければ、あれだけ細かく話せないのではないか。菅官房長官の記者会見では、官邸の記者が『れいわ』を平板の発音で質問していたのに対し、岩田記者は最初から(菅官房長官と同様の)頭高(『れ』にアクセント)の発音だった。よく取材しているなと感心したほどです」。

 岩田氏は永田町では“安倍首相に最も近い記者”として知られている。事前につかんでいたのか!?

【落選したのは4案】落選したのはこれだった。新元号の最終案6案のうち採用されなかった4つの案が2日、政府関係者の話で分かった。残り1つは判明していない。

 4案は「英弘(えいこう)」と、「広至」「万和」「万保」だという。「広至」は「こうじ」または「こうし」、万和は「ばんな」、万保は「ばんほ」あるいは「ばんほう」。

 この4案にある文字のうち、「和」「弘」「万」は過去に複数回使用されているが、「英」は前例がないとみられる。

 NHKによると約2か月前から候補の絞り込みが行われ、発表の1週間ほど前に6つに決まったという。

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