「ザ・ファブル」の江口監督が明かす“モンスター”平手友梨奈の底知れぬ可能性

2021年06月01日 06時15分

プレミアイベントに出席した(左から)山本美月、安藤政信、木村文乃、岡田准一、堤真一、江口カン監督

 シリーズ2作目となる岡田准一(40)の主演映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(6月18日公開)の江口カン監督が本紙のインタビューに応じた。カンヌ国際広告祭で3年連続受賞し、近年力を注ぐ映画でも「ガチ星」「めんたいぴりり」、スマッシュヒットとなった前作「ザ・ファブル」といった話題作を次々に監督した。映画界の注目を集める江口監督が、撮影中の秘話や自身が「モンスター」と評した平手友梨奈(19)の底知れぬ可能性を本紙に明かした。

 ――前作を超えるために意識したことは

 江口監督 映画会社から前作を超えるものを作りたいと言われて「簡単に言うな」と(笑い)。超えるとは何だろう、そこから考えた。実写化する意味って、漫画の原作のキャラクターに演じる俳優の人生や思いが重なることに意味がある。そうじゃなかったらアニメ化したらいい。グッと乗っかって登場人物が仕上がる瞬間がある。そこに手応えを感じました。

 ――岡田さんが前作以上のアクションを見せた

 江口監督 身体能力は素晴らしいし、映画そのものの経験もいっぱいある。どういうものが映画として魅力的なのかを知っている。あと、面白いなと思ったのは岡田さんと現場で「物理的に」って話をよくした。CGやワイヤーアクションって物理的にあり得ないじゃないですか。物理的にあり得る範囲でギリギリを攻めた。岡田さんは理系脳があるんだと。ぼくは圧倒的に理系なんで、そこらへんの話は合う。重力、加速度、人間の筋力が拮抗した時に人間ができるギリギリのアクション。そこにリアリティーが生まれる。

 ――岡田さんが「動」の演技で、平手さんは「静」の演技でひきつけた

 江口監督 演技うんぬんの前に彼女の持ってる雰囲気がね。一番最初に会ったときに、僕が感じたままを言うと「モンスターやな」と思った。得体のしれない、底知れぬ深さのようなものを感じた。でっかい湖の前に立ったときに、これ、どれぐらい深いのかなって思うような感覚。

 ――実際の撮影中は

 江口監督 モンスターが出てくるのは相手俳優とのセッション。山の中で彼女のエネルギーが爆発するシーンがあって「本人も頑張ってたし、これでいいか」と思ってOKを出した。その直後に相手の堤真一さんを(別カットで)撮る時に、もっと2人の距離を近づけてみたんですよ。そしたらカメラを向けていない平手ちゃんがものすごい爆発力を出してた。さらに堤さんにもっとあおる芝居をしてもらったらモンスターが出てきた。「しまった。こうやるべきだったんだ」と思って、スタッフみんなに謝ってもう1回撮り直した。持ってるエネルギーがすごくて、それをちゃんと出せるかどうかはこちらの技量。試されます、こっちが。

 ――広告界では国際的な賞を獲得。映画製作でも世界を意識するか

 江口監督 最初から世界中に売ろうとしているのか、まずは国内で売って運がよければ海外へ持って行くのかでは、全然もののでき方、作り方が違う。世界の人に対して何を突き付けようとするか。今、ネットフリックス(作品)の準備中で、もちろん日本でのヒットを前提でやってるけど、海外の人たちが見た時につまんなかったら意味がない。そこを最初から意識してるかどうかで、だいぶ違うんじゃないかな。

 ――映画を通じて伝えたいことは

 江口監督 大変なことも苦労も含めて、生きててよかったと思えるものにしたい。ヤクザだったとしても映画で描いてあげることで肯定してあげられる。もちろん悪いことしてるやつはダメなんだけど、個人の人生としては全うさせてあげたい。その人生は誰からも全否定されるもんではないんだから。みたいなことを考えながらキャラ作りを考えてます。

☆えぐち・かん=福岡県出身。九州芸術工科大学卒業。97年に映像制作会社KOO―KIを共同設立。2007~09年、カンヌ国際広告祭で3年連続受賞(07年銅賞/08年銅賞/09年金賞)。映画デビュー作「ガチ星」が「映画芸術」2018日本映画ベスト10にランクイン。その後「めんたいぴりり」「ザ・ファブル」シリーズを監督。

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