先週末にネット配信でようやく公開されたディズニーの実写版映画「ムーラン」をめぐり、同社に批判が殺到している。最後に流れるエンドロールで、撮影協力として新疆ウイグル自治区の中国共産党当局に感謝のメッセージを送っていたことが分かったからだ。

 同自治区は中国当局による住民の行動監視が行われる〝世界でも類のない警察国家〟とされ、イスラム教徒などが100万人単位で再教育キャンプに収容されるなど、迫害が続いているとして国際社会から強い非難を浴びている。

 米芸能誌「ハリウッド・リポーター」(電子版)によると、「ムーラン」のロケの一部は同自治区でも行われ、撮影協力として人権侵害に関与しているとされる中国共産党の機関にも謝意を表したというのだ。

 ほかの映画同様、「ムーラン」もコロナ禍の影響で公開が延期され、ようやく4日からディズニーの動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の一部加入者向けに配信を開始したばかり。

 そんな中、映画を見た視聴者が「エンドロールに中国共産党の新疆ウイグル自治区委員会広報部や公安当局など8つの機関に送る〝特別感謝〟のメッセージが含まれている」と指摘。

 同広報部は住民に党の正当性を主張するプロパガンダを担当という。それら機関に〝謝意〟を示したことで、ディズニーへの不信感からSNSを中心に批判が一気に広まったのだ。

 実は同作品に主演した中国・武漢出身のハリウッド女優リウ・イーフェイ(33)の発言を巡って映画のボイコット運動が起きていた。

 リウは昨年、香港の民主化デモを力で抑え込もうとする地元警察への国際社会からの批判に対し、中国版ツイッター「ウェイボー(微博)」で警察当局を支持する立場を表明。これに対し、香港市民を応援する人たちから「ムーラン」ボイコットの呼びかけが拡散していたのだ。

 そして今回、映画が公開されたことで再びリウの発言が注目を集め、そんな中で〝エンドロール問題〟が上乗せされる形となった。ディズニーは同誌の取材にコメントをしていない。