肺がんのため10日に亡くなった映画監督の大林宣彦さん(享年82)の妻で、監督作品のプロデューサーを務めた夫人の大林恭子さんが14日、コメントを発表した。

 恭子さんは「この度、監督は、次回作のロケハンに出かけました。連日連夜、映画の夢の中、撮影現場にいるらしい監督は元気な声で『ヨーイ、スタート。カット。オーケー。皆、お疲れさん、ありがとう』。毎晩その楽しそうな声に私は目を覚まし、『お疲れさま、ありがとう』と答えていました」と明かした。

 続けて「数日前、真夜中に講演らしきお話をしていました。そんな中『岩井君、手塚君、犬童君、塚本君たちが映画をつないで平和な世の中に……』と、とぎれとぎれ聞こえてくる言葉、いつもと変わらない最後の言葉『ありがとう』。そして、監督が繰り返した『皆さん、ありがとう』を監督の遺言としてお伝え致します」と紹介した。

 また「私との63年間の日々は、文学と音楽と映画の日々。いつも監督の口癖は『眠るのは死んでから充分眠れるのだから眠るなんて勿体ない』と本当に眠りませんでした」と監督の日々の生活を振り返った。「今頃、ロケハンの途中の天国村で、黒澤明監督や本多猪四郎監督、立川談志さん、高畑勲監督、和田誠さんにお会いして、映画談義が尽きることなく、やっぱり眠っていないのではと思います」ともコメントした。

 そして「まだまだあふれる才能の持ち主、彼にあと三倍の映画の時間をあげたかった。大林作品を愛して下さったすべての人に監督の『ありがとう』をお伝えしたく存じます」とした。