2020年東京五輪の大会公式映画の監督を務める河瀬直美氏(50)が14日、「朝日地球会議2019」(東京・千代田区)のトークイベントに出席し、作品の準備状況などを語った。

 カンヌ国際映画祭でグランプリ(「殯(もがり)の森」=07年)など複数の賞に輝き、審査員長も経験した河瀬監督。昨年、五輪公式映画の監督に決まると変化が生じた。

「『カンヌの河瀬』じゃなくて『オリンピックの河瀬』というふうに。街角で『オリンピック、頑張ってや』って声をかけられる」

 五輪の認知度の高さを実感。東京五輪の公式映画といえば、1964年大会を手掛けた巨匠・市川崑監督(故人)の作品が有名。それを同時代に見た人たちから「アレをやるのか、アンタ」と言われたことも。スイスのIOC(国際オリンピック委員会)本部を訪れ、市川作品の評価の高さを実感した。

 たびたび聞かれるというのが「どんな映画を撮るのか」。まだ出場選手さえほとんど決まっておらず、「映画で言えばキャスティングもされていない状況」。ただ、選手のドラマを意識していくつか取材の交渉を始めていることも明かした。年内には一定の構成をIOCに示し、来年3月にはそれを軸にして準備を進める方向だ。

「ドキュメンタリーというのは、先がないからこそ、ドキドキワクワクを監督も含めてしていかなきゃいけない。それはある種、冒険です」

 肉体の限界への挑戦など、五輪をとらえる基本とともに「映画なのでストーリーも大事です」。奈良県の高校時代にバスケットボールで国体出場歴がある河瀬監督は「私にしか作れないものを作らないと意味がないと思います」と締めくくった。