青春映画で開花した“ラッパー”野村周平 監督は「天才です」と絶賛

2019年10月05日 17時00分

初監督を務めたANARCHY

「天才や、あいつ」――。人気ラッパーANARCHY(アナーキー)氏がそう評した役者がいる。同氏が初めてメガホンを取った映画「WALKINGMAN(ウォーキング・マン)」(11日全国公開)で主演した野村周平(25)だ。きつ音症でうまく会話できないことに苦しみながらもどん底からラッパーを目指す青年・佐巻アトムを演じた。野村の新たな一面を開花させた作品となったが、“ラッパー野村”の実力はどうなのか。製作の経緯や裏話とともに監督が話してくれた。

 ――なぜ映画を

 ANARCHY監督(以下監督):映画が昔から好きなんです。1時間半や2時間で一人の人生を切り抜くというのはすごくアートだと思ってた。歌で自分のことを伝えるのもいいけど、俳優の人たちが僕のメッセージを演じて伝えてくれるということが面白かった。

 ――どんなジャンルが好きですか

 監督:ジム・キャリーとか、実はコメディーが好きなんです(笑い)。

 ――今回は青春映画

 監督:青春映画も好きなんです。「ロード・オブ・ドッグ・タウン」とか大好きです。逆にマフィア映画とかダメで、バッドエンドなものがあまり好きじゃない。コメディーはいつか作りたいと思うんですけど、自分が持っているもの、経験したものはやはりヒップホップやラップしかなかった。だから、その中で自分でできるものをやろうとした。でも僕だけのことしか伝えられないようにはしたくなかった。誰にでも共通すること、何かになりたいという一つのメッセージだけでも伝えたかった。

 ――そんな監督の思いを演じたのが野村さん

 監督:4、5年前くらいから友達で。行くバーが一緒、友達が一緒みたいな感じで自然に。芸能人っぽくないんですよ(笑い)。一緒にスケボーして遊んだり、俺の前で俺のラップしたり。ただ、もともと野村君以外に考えてた役者さんがいたんです。でもその人がダメになって困っているときに、いろんな人に台本を読んでもらっていた。その中に野村君もいたんです。忙しいし、無理やろって思ってたので読んでもらうだけで、お願いするつもりもなかった。そうしたら「やりましょか? これ、僕やりますよ」って。男気ですよね。彼に決まったことによって参加してくれたキャストの方もいたと思うし、野村君さまさまです。

 ――ラップの実力は

 監督:彼は歌えるんですよ。ただ俺の前では歌えても、撮影現場で100人の中でラップするというのはまあ、できないと思ってた。でも度胸もあるし、歌えるんですよ。逆に大変だったのが、ヘタに歌うこと。ラップバトルでも本物のラッパーと戦わせるんだけど、たまに周平が勝っちゃう。それじゃダメだって(笑い)。

 ――アルバイトをしながらラップを口ずさむ場面は印象的でした

 監督:あの曲はごはん食べている間にリリック(歌詞)を書いて、いきなり渡したんです。ちょっとメチャ振りしていじめたろ(笑い)って思ったんですけど、そのまま歌っちゃうんですよ。あっさりと。あいつ天才ですよ。

 ――主人公の名も変わってます。野村さんがアトムで妹はウラン

 監督:それは(企画・プロデュースを担当した漫画家の)高橋ツトムの遊び心です。ちょっとバカにされる名前をつけるなんてどんなオトンやと。途中でアトムの家に入ると死んだお父さんの写真が飾ってあるんですが、実はあれ高橋ツトムなんですよ(笑い)。

 ――それは結構裏ネタですね(笑い)。野村さんの男気だけじゃなく、多くの方から支えられている

 監督:そういうところが俺、ラッキーなんですよ。感謝です。雨降ってきたときに両手を広げて「雨やんでくれ」って願ったら本当にやんだ。そのおかげで大切な場面が奇麗に撮れた。神様に味方されているんだと感じました。

 ――特に見てもらいたい場面は

 監督:終わりのシーンですね。あそこでクランクアップだったんですけど、すべてが詰まっている。撮ってて泣けてきました。絶対にいいものが撮れたと確信が持てました。

 ――映画への熱は冷めない

 監督:次はヒップホップで撮ってみたいです。

☆あなーきー=1980年1月1日、京都府生まれ。1995年活動開始、2006年ファーストアルバム「ROb The World」をリリース、高い評価を得て一気にトップラッパーに。2014年エイベックスからメジャーデビュー。今作品で映画初監督を務める。