巨匠・山田洋次監督(88)の“変顔”を激写した。最新作「男はつらいよ お帰り 寅さん」がオープニングを飾る、「第32回東京国際映画祭」(10月28日〜)のラインナップ発表会見(26日、都内)でのひとコマ。かしこまった席で、さほど表情豊かではなかった山田監督だが、まるで加藤茶(76)の往年ギャグ「加トちゃんペッ!」をやる瞬間のようだ。

 同作は寅さんシリーズ50本目で、第一作公開から50年目の節目となる今年の年末公開。寅さんファミリーの今を描いた新撮映像に、過去作の映像をつなぎ合わせた。「出来上がった映画を見てね“あ、50年かけて作ったんだ”ってことが分かって、不思議な思いを抱いた」という山田監督は、「長生きして良かったなと、そういう感じですね」としみじみ。

 過去のどの寅さんのシーンを使うかのチョイスは「一番悩んだとこ」だが、出来ばえには大満足のよう。

「中には『CGで寅さんつくるのか』なんておっしゃる方がいたんですが、そういうことはしない。もう40年、50年前のプリントが(4K)デジタルでリマスターすると、非常に奇麗なんですね。古いフイルムだからって決して劣化してるわけじゃない。完全にニュープリントと同じ状態ですから、カットワークしても違和感が全然ない」

 故黒澤明監督(享年88)が「映画ってのはカットをつなぎ合わせて作るもんなんだけど、カットのつなぎ目に魔法が働くんだ」とよく言っていたという話を引き合いに出し、「その魔法がちゃんと僕には感じ取られた気がしましたね」と山田監督。寅さん役の故渥美清さん(享年68)がもし同作を見たら?と聞かれると「そうね〜。『山田さん、よくやったね』って言ってニヤニヤ笑うでしょうね」と想像した。

 この日、来場者が一番笑ったのは、質疑応答で質問に立ったタクシー広告業者に、山田監督がこんな注文をつけたときだ。「タクシーの中で広告を確かに見ることがありますけども、いつも“もうちょっと良くできないかな”と思って見てますね。目まぐるしいだけで、もうちょっと楽しいものを作ってほしいと思ってます」

 会見の司会を務めたのは、今月いっぱいでフリーに転身するフジテレビの笠井信輔アナ(56)。局アナとして最後の大役を果たし、終盤のフォトセッションではNHKのカメラクルーを見つけるや「これから私もお世話になるかもしれません」と“売り込み“をかけていた。