上田慎一郎監督 カメ止め“第2作”は「もやもや、いびつさが残ります」

2019年08月09日 17時00分

左から中泉裕矢監督、上田慎一郎監督、浅沼直也監督

 16日から映画「イソップの思うツボ」が全国公開される。「『カメラを止めるな!』のクリエイター再集結!」のキャッチコピーにもあるように、口コミから220万人以上を動員し大ヒットした「カメ止め」の上田慎一郎監督、中泉裕矢助監督、スチール担当の浅沼直也氏の3人による共同監督という異色作だ。著名小説やコミックの映像化が続く映画界で、改めてオリジナル映画の魅力や可能性を伝えた「カメ止め」。そのスタッフによる“第2作目”は「カメ止め」とどこが違うのか。監督3人に聞いた。

 ――なぜ3人で監督

 中泉監督:僕ら2012年のSKIP(シティ国際Dシネマ)映画祭で出会って「4/猫、ねこぶんのよん」(15年)というオムニバス映画を作り商業デビューしたんですけど、また僕らで作品を作りたいね、今度は長編で、長編なら3人でやろうという自然な提案から形になりました。

――題名の意味は

 浅沼監督:これは僕が答えます。イソップ寓話からです。この映画も3家族がだまし合いや出し抜いたりという話なので、その寓話性を込めて題名にしたところがあります。でも感じ方はそれぞれ違うので、お客さんがどの意味なんだろうと考えるのが僕らの思うツボ、ということです。

 上田監督:いや、ウソですよ(笑い)。

 浅沼監督:いや、ウソではない。

 上田監督:僕らのって言うのやめて(笑い)。

 浅沼監督:ああ、僕のね(笑い)。

――監督それぞれのこだわりポイントは

 中泉監督:(大学の臨時講師・八木の)前髪触っているところですね。

 浅沼監督:僕は川瀬というやくざを演出しているんですが、このやくざの中間管理職感。あと、その部下が右近と左京という名前なんですが、絶対右と左にいます。それを楽しんでほしい。

 上田監督:僕は若い女の子が戦っていたり、銃を持っていたりするのに萌えるんですよ。中学男子的な気持ちというか(笑い)。映画のけれんみ、B級感にあふれた映画なんです。正直突っ込みどころもありますが、映画にリアリティーを追い求めすぎても僕は面白くないと思っている。ちょっと飛躍しすぎなところも含めて、突っ込みながら楽しんでほしいです。

 中泉監督:追加してもいいですか。最初にヒロインの女の子がカップラーメンを食べているシーンがあるんですが、そこを見てほしいです。わかめラーメンの「わ」を隠して食べているので。

 上田監督:そういう細かい遊びも見てほしい。

 中泉監督:3人のヒロインが結構評判がいいんです。この3人のかわいらしさを見に来てくれるだけでも意味、価値があると思います。

 ――それにしても「カメ止め」とは結構違う

 上田監督:「カメ止め」のクリエーターが作ったのは間違いないんですけどテイストはかなり違います。別の映画だと思って見ていただいたほうがフラットに楽しめる。全く違う食べ物を食べに行く…この表現、いろんなところで使われているから恥ずかしいな、だからラーメンをですね…。

 浅沼監督:言うんだ(笑い)。

 上田監督:ラーメンを食べに行ってラーメンじゃないものが出てきたら困惑するじゃないですか。だから最初から違うものを食べるつもりで。

 浅沼監督:「カメ止め」が光だとしたら、こちらは影なんですよ。「カメ止め」とは違い、こっちの家族はお互いが出し抜いて、だまし合って本当の家族の意味を探っている。見終わった後のもやもやはすごく残ると思う。テーマ、つまり麺類という点では同じですけど(上田監督むせる)、別の料理になっています。

 上田監督:普通は一人の監督が大きなビジョンをもとに映画を作る。でもこれは3人のビジョン、好みやタイプが一つの箱にごちゃまぜに入っているんです。僕はエンターテインメントが結構好きで、浅沼さんはちょっと芸術肌なんです。こう見えても。

 浅沼監督:それ、今いる?

 上田監督:中泉さんは結構、心を大事にする。人情を大事にしたい(笑い)。そういう3人の好みがぶつかり合って、あまり見たことのない地点で落ち着いているのがこの作品。ここ人情でやるんや、いや娯楽で、いや芸術的にという。だから今まで味わったことのないもやもや、いびつさが残る。

 中泉監督:でも僕は結構エンタメだと思います。読後感だけがちょっと違うけど、いろんな人に見てもらいたい。

 上田監督:最後の捉え方もいろいろあるね。

 中泉監督:見終わった後、3人で喫茶店に行ったら3人とも違う感想を言いそう。

 上田監督:3人で見に行ってほしい。2人ではぶつかってしまう(笑い)。