角川春樹氏に生涯最後の監督作品製作を決意させた40歳年下妻の言葉

2019年08月06日 17時00分

メガホンを取ると宣言した角川春樹氏

 1970年代後半から90年代にかけて映画、出版、テレビなどメディアの垣根を飛び越えて大暴れし、「時代の風雲児」と呼ばれた角川春樹氏(77)が、生涯最後の監督作品となる映画「みをつくし料理帖」を製作することを明らかにした。40歳年下の妻と6度目の結婚をし、息子を育てることで心境の変化が生まれたという。最後の作品を前に、角川氏の胸に押し寄せた思いとは――。

 角川氏といえばプロデューサーなどで、1976年の「犬神家の一族」を皮切りに、「人間の証明」(77年)、「セーラー服と機関銃」(81年)、「蒲田行進曲」(82年)、「時をかける少女」(83年)など数々の名作や大ヒット映画の製作を手掛けた。

 また、プロデュースだけにとどまらず、自らメガホンもとってきた角川氏。8本目となる生涯最後の監督作品として選んだのが「みをつくし料理帖」だった。

 原作は髙田郁氏による時代小説で、天涯孤独な少女・澪が、大坂から料理の腕一本を頼りに江戸へ。様々な苦労を乗り越え、一流の女料理人を目指すというもの。同作は、これまでにシリーズ全10巻が刊行されており、累計400万部を超える大ベストセラー小説だ。

 2012年と14年には、テレビ朝日系で北川景子主演でドラマ化。17年にもNHKで黒木華主演で連続ドラマ化されている。角川氏が初めて劇場版映画を決定し、この8月中にもクランクインする予定だ。

 製作決定に伴い、メインキャスト3人も発表。角川氏といえば、オーディションで薬師丸ひろ子や原田知世らを発掘。映画デビューさせ、多くのスターを生み出したことでも知られるが、同映画の主演に抜てきしたのは松本穂香(22)。昨年7月期のドラマ「この世界の片隅に」(TBS系)で主人公・すず役を務めた若手実力派女優だ。

 また、澪と幼なじみの野江を演じるのは、女優の奈緒(24)。また、江戸の吉原で頂点を極めるあさひ太夫を守る男・又次を俳優・中村獅童が演じる。
 当初、角川氏は監督をするつもりはなかったという。

 背中を押したのは、11年に自身6度目の結婚の相手となった妻で歌手のASUKAさんだった。

「2年前から女房に勧められて、大学時代にしていたボクシングを50年ぶりに再開しまして。女房としては『みをつくし料理帖』を私の最後の監督(作品)として撮らせたい気持ちがあり、体力づくりのためにボクシングを勧めたようです。“あなたは監督作品の最後として『みをつくし料理帖』をやるべきだ”“製作だけならやる必要はない。製作、監督で初めてあなたの思いは伝わってくる”と、女房に押されました」

 現在も角川春樹事務所社長兼会長として多忙な日々を送りながら、東京・自由が丘にある「戸髙秀樹ボクシングジム」に週2回通っているという。
 70歳の時に生まれた6歳になる息子の存在も大きかったようだ。

「角川(春樹事務所)としても映画を撮るのは10年ぶり。私自身も監督として8作目ですが、『最後なので楽しんでやろう』と。現場スタッフにもそう言っている。以前なら現場で殴ったり蹴飛ばしたりしていたが、今やまったく反対で(笑い)。子供ができたことが大きいきっかけですね。自分より大切なものがあるんだ、と気づいた。撮影時期は息子が夏休みなので、映画監督をしている姿を見せたい。実に家族的で…以前の角川春樹には考えられない(笑い)」

 仕事を終えた夕方からは子供中心の生活を送っていたという角川氏。かつてのギラギラさはなく、終始柔和な表情を浮かべていた。

☆かどかわ・はるき=1942年1月8日、富山県生まれ。株式会社 角川春樹事務所代表取締役会長兼社長。出版業の傍ら76年「犬神家の一族」で映画界に進出。製作作品は「人間の証明」「探偵物語」「ぼくらの七日間戦争」「男たちの大和/YAMATO」など計70作を超える。監督作品は「天と地と」などがある。