映画「愛がなんだ」主演の岸井ゆきの(27)と今泉力哉監督が公開初日の19日、名古屋・伏見ミリオン座でインタビューに応じた。

 角田光代原作の今作は、山田テルコ(岸井)が、ダメ男・田中マモル(成田凌)への思いをとことん貫く純愛映画。だが、登場人物は「全員どこかエキセントリック」(岸井)で、特にテルコの行動は痛々しい。「めんどくささや、つらさこそが恋愛の魅力」と説く、今泉監督の本領発揮作だ。

 唯一の不安は同性から嫌われそうなテルコの性格設定。だが岸井のテルコは、どこか共感できる魅力的なキャラクターに仕上がっている。

「マモちゃんがとにかく大好きということを考えてました。監督のことをよく知っていれば、求められていることが分かったりする。でも今回は初めてで分からなかったので、その分すごくテルコの気持ちに素直になれました」(岸井)

 岸井の演技でテルコを膨らませてもらったという今泉監督も「最初のうどんを作るシーンのテンションが高すぎないかと思ったけど、あのうざさがテルコなんだなと思って(笑い)。俺がコントロールして演技の幅を狭めなくてよかった」と深くうなずく。

 そんなテルコに対し、役柄から成田は仲良くなりすぎないよう気を配っていたという。それが端的に表れていたのが待ち時間の「なわとび」だ。

 体を鍛えるために持参した成田からロケ初日に誘われ「小学校以来かも」というなわとびに挑戦した岸井だが「一緒に外に出てくるんだけどやるのはバラバラ。一緒にいるのに一緒にやってくれないんです(笑い)」。

 映画には“なわとびの距離感”がそのまま落とし込まれている。作品を通じて岸井が感じたのは「愛って答えがないんだな」。感想が割れる内容だが「それこそが映画の豊かさだと思っている」(今泉監督)。