声優シンガーの楽曲は、ボーカリストとして見た場合に、大きく2種類に分けられる。“自分の声”でソロアーティストとして歌うか、アニメで演じるキャラクターになり切ってその声で歌うか。

 2014年放送のアニメ「ノーゲーム・ノーライフ」エンディング曲「オラシオン」は、主人公の白(しろ)を演じた茅野愛衣が、「白(茅野愛衣)」名義で歌ったもの。つまり、最初の分類でいえば後者に当たる。

 このアニメでは鈴木このみが歌ったオープニング曲「This game」のほうがアニソンのスタンダードナンバー化している感があるが、こちら「オラシオン」も見過ごせない名曲だ。

 茅野愛衣はユニットを含めて100曲を超えるキャラクターソングを歌っているが、本人名義の作品は昨年リリースのミニアルバムぐらいで、ほとんどない。キャラソンに関しては、声優としての声のバリエーションもかなり豊富な人なので、楽曲ごとのボーカルも徹底的に演じ分けられている。

「オラシオン」でも、その“キャラ感”がとんでもなく良い方向に結実。歌い出しは、ささやくような、というか、ほとんど吐息に音階が付いているだけのような抑えに抑えたボーカル。それがサビではもっと明るく元気にエモい歌い方に変化する。

 今や、歌唱力に優れた実力派の声優シンガーは数え切れないほどいるが、茅野愛衣のうまさというのは、完璧にそのアニメのキャラクターが歌っていると錯覚してしまうような“高度な歌う演技力”にある。オリジナル曲よりも圧倒的にキャラソンが多いというのは、つまりそういうことではないだろうか。