日本全国に増え続ける面白い名前のパン屋のプロデューサー・岸本拓也氏が、もし地方の街をプロデュースしたら? 新規開店のために日本を飛び回り、地道な調査を重ねる岸本氏。蓄えた知識を街おこしに生かしてもらおう、という連載です。

【静岡・藤枝③】

 藤枝にはレジャーや食文化のほかにも、さまざまな観光スポットがあります。

 江戸時代に建てられた「大旅籠柏屋」は、当時の旅籠(宿)の様子や人々の暮らしぶりが分かる資料館なのですが、私はここで藤枝の歴史に触れることができました。

 藤枝市は東海道にある53の宿場(東海道五十三次)の一つであり、市内にある岡部宿は、品川宿から数えて21番目に位置する宿場町です。
「大旅籠柏屋」は建物そのものが資料館になっており、1階には台所や仏間、展示室などがあります。2階は客間として利用されていた場所で現在はジオラマが展示されています。

 1階の通し間から和風庭園が見られるようになっていて、中にはカフェがあったりと、昔の旅籠屋を改装してこうした観光施設を造っているのは非常に面白いと思いました。静岡に行くことはあっても藤枝というベットタウンをクローズアップすることがなかったので、新しい発見がたくさんあります。

「ななや 藤枝本店」という抹茶のスイーツファクトリーでは、抹茶ジェラートの濃さが7段階で販売されています。好きな濃さを自分で選ぶのですが、店頭には味が濃い順にグラデーションに並べられていてとてもきれいです。私は一番濃い抹茶を選びました。味はやっぱり苦いですが、決して濃すぎるということはなく、コーヒーのエスプレッソを飲んでいるような感じでちょうどよかったです。

 抹茶のロールケーキなども販売しており、オンラインショップで購入することも可能です。抹茶の商品を通して地元農家の活性化につなげる意味でも面白いと感じました。

 農業振興としては他にも取り組んでいることがあります。静岡市に本社を置く、オリーブ栽培と関連商品を手がける「クレアファーム」さんでは、来年5月に藤枝市内にオリーブを核とする観光農園を開くプロジェクトを始動させています。農園周辺にカフェなどを造り、農業に関心がある観光客などを呼び込む狙いもあります。

 農業など藤枝の魅力をもっと掘り下げていく形で街をアピールすれば、多くの観光客が集まるのではないでしょうか。