日本全国に増え続ける面白い名前のパン屋のプロデューサー・岸本拓也氏が、もし地方の街をプロデュースしたら? 新規開店のために日本を飛び回り、地道な調査を重ねる岸本氏。蓄えた知識を街おこしに生かしてもらおう、という連載です。

【静岡・藤枝①】

 今回からお話ししたいのは静岡県藤枝市の魅力あふれる文化についてです。藤枝市の人口は約14万人で静岡県の中部に位置するベッドタウンです。地元の方は藤枝市から仕事のために静岡市へ通う人が多い場所でもあります。

 そんな藤枝市に観光やレジャーで訪れる方は多くはないですが、同市に昨年、高級食パン専門店「もしもパン屋ができたなら」をオープンしたことをきっかけに、もっとアピールすべきだと感じる藤枝市の魅力を発見しました。

 まず食の文化です。静岡といえば、言わずと知れたお茶の名産地。新茶のシーズンとなる4月になると、農家や問屋は朝の4時や5時という早朝から仕事を行っています。こういった背景から生まれたのが、朝食にラーメンを食べる「朝ラー」です。

 朝ラーといえば、藤枝市以外に福島県喜多方市も有名です。藤枝市の朝ラーは2杯目を冷たいラーメンで食べることがベターな食べ方といわれており、その少し変わった食文化がテレビ番組で取り上げられることもしばしば。一般的なラーメン店は午前11時から営業を始めますが、藤枝市内の多くのラーメン店は朝7時や8時から営業しています。

 ラーメン好きな私は、たまに自宅で朝食にラーメンを作って食べることがあるのですが、やはり本場の朝ラーは別格でした。私が行ったのは「ちっきん」というお店で、特濃煮干し中華そばを食べたのですが、煮干しスープがとにかく絶品でした。

 夏には期間限定で「夏トマトの冷たいしおらぁめん」などオリジナルのメニューも発売されており、個性的なお店でもあります。

 藤枝市にはこういったこだわりのラーメン店がたくさんあります。朝からラーメン屋さんをハシゴするのも藤枝市の楽しみ方の一つだと感じました。