世界的に有名なギタリスト、マーティ・フリードマンが、平成生まれのアイドルと昭和の歌を語る連載。昭和歌謡好きで知られるBEYOOOOONDSの島倉りか(20)オススメの中期チェッカーズの曲が好みじゃなかったマーティ。初期の曲で違う反応が! 

【チェッカーズ論2】

 ――前回、チェッカーズ中期の自作曲きっかけで、1980年代の超人気バンドだった彼らが音を洋楽に寄せていたこと、一方、「うっせぇわ」など最近のJ―POPは実に日本独特で、海外にないセンスがあるという話になりました。80年代と今の違い、さらにマーティさんが何を重要視するかが浮き彫りになりました

 マーティ 最近の日本の音楽のセンスって、60年代、70年代ぐらいに戻ってる感じなんですよ。当時の演歌とかポップスとか、ダークなメロディーがあったじゃないですか。このダークさはアメリカ人は味わったことないんです。

 島倉 それが日本独特の“味”につながってるんですね。

 マーティ 日本には民謡とか民族音楽にさかのぼる、悲しい気持ちが出るメロディーセンスがあります。いまのJ―POPはそういうメロディーセンスがはやってると思います。さっきのチェッカーズの曲は、そういうダークさが全くないじゃん。

 島倉 確かに!

 ――そう言われると、洋楽っぽいというのがよくわかります

 マーティ 演奏は素晴らしいですよ。これはスタジオミュージシャン?

 ――いえ、本人たちです。特にドラムの故徳永善也さんとベースの大土井裕二さんのコンビは高く評価されていました

 マーティ セッションプロみたいな演奏ですよ。才能を感じます。

 ――中期はマーティさんの好みじゃなかったですが、初期はどうでしょう? まずは初ヒット曲「涙のリクエスト」(84年)です

 マーティ(出だし部分で)これは少し日本を感じます。なぜかというと、50年代のモチーフをその時の最新の音の編成で作るのは、昔から続く日本のやり方です。BEYOOOOONDSの「ビタミンME」も50年代モチーフのポップじゃん。ハッピーなモチーフだから個人的にすごく好きなんですけど、80年代の洋楽にはこのモチーフがあまりなかったんですよ。特にアップテンポは。

 ――サビが心地良くて印象に残ります

 マーティ サビは超日本的です。この曲、いまカバーしても全然違和感がないでしょ?

 島倉 2016年にカントリー・ガールズがカバーしました。

 マーティ ハロプロでやってたんですね。その前に聞いた自作曲は、今カバーしたらちょっと微妙です。

 ――次はデビュー曲「ギザギザハートの子守唄」(83年)。マーティさんが「うっせぇわ」とマッシュアップした曲ですね

 マーティ とても日本的です。メロディーセンスが他の曲と違うと思いません? 軍歌流してるトラックから聞こえてきそうじゃん。このメロディーを譜面に起こすと、昔の軍歌に近いと思います。

 ――確かに、郁弥さんは「演歌か」と言ったとか。続いてチェッカーズ最大のヒット曲「ジュリアに傷心」(84年)です

 マーティ これはとても日本的ですね。特にキメです。こういう「ダダダダ」というキメは超日本を感じます。海外ではそんなにキメが入らないですし、合いの手も日本ほどないです。それにしても、不思議だと思いませんか?

 島倉 なにがですか?

 マーティ 最初に聴かせてくれた2曲と、今の3曲、同じアーティストと思えないほど雰囲気が違います。

 島倉 確かに! 気にせず聴いてましたが、言われてみればそうです。中期の曲はアメリカチックでおしゃれ。初期の曲は“キレ”があって耳に残りますね。

 ――初期曲と中期曲の最大の違いは作家です。今聴いた初期の3曲は全て作曲・芹澤廣明氏。作詞は「ギザギザ―」が康珍化氏、他の2曲は売野雅勇氏という、多数のヒット曲を生み出した方々です。次回は芹澤氏が中森明菜に提供した曲を聴いてみましょう  

 ☆マーティ・フリードマン 米・ワシントン出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮花」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。伝説の音楽バラエティー「ROCK FUJIYAMA」がユーチューブで復活。

 ☆しまくら・りか 2000年8月20日生まれ。東京都出身。19年にBEYOOOOONDSとしてデビュー。ユニットCHICA#TETSUのメンバー。最新シングルはオリコン初登場1位の「激辛LOVE/Now Now Ningen/こんなハズジャナカッター!」。ハロー!プロジェクト2021春公演は「チーム花」で参加。