【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】アジア最大級のリゾート、タイ・プーケット島で今月1日、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。中国のシノバック・バイオテック社製で、まず5万回分を輸入。今後はペースを上げ、全島民の7割にあたる46万人にワクチンを接種し、島全体を流行拡大が起こりにくくなった状態「集団免疫」にする一大作戦だ。

 地元メディア「プーケット・ニュース」によると、体育館やショッピングモールなどを会場とし、まず基礎疾患のある人や高齢者、医療関係者に優先接種している。13日のタイ正月までに、1回目の接種を5万人に。続けて2回目の接種と、新規の1回目の接種を行うという。

「首都バンコクをはじめ、タイの他の地域でもワクチン接種が進んでいるが、大幅に先行させているのがプーケット。というのもプーケットでは7月1日から、隔離期間なしで外国人観光客を受け入れるのを目指しているから」とは、タイ在住の日系旅行会社社員。

 これまでタイへの渡航は、入国後2週間のホテル隔離が義務付けられていた。それが今月1日から、ワクチン接種した外国人に限り、隔離期間が1週間に短縮。さらに7月からはプーケット限定で、ワクチン接種証明がある外国人は隔離期間なしで入国し、観光できるようになるという。

 プーケットは地元民の大半が観光業に従事。他の地域にも増して、外国人観光客なしでは経済が立ち行かない。一昨年のコロナ前は、約4000万人の外国人観光客が訪れ610億ドル(約6兆7000億円)消費したが、昨年以降その額は激減の一途。

 プーケットは以前、タイで最も裕福な地として知られていた。1日あたりの最低賃金は、バンコクの331バーツ(約1165円)を上回る336バーツ(約1183円)と規定。それがコロナ禍により景気が一気に落ち込み、失業者が急増。一刻も早い観光再開が望まれている。

 美しいビーチリゾートというだけでなく、タイ南部最大の歓楽街としても有名。特に島西部のパトンビーチには、ゴーゴーバーやクラブ、ディスコなどが乱立し、世界中から観光客が集まり夜な夜ならんちき騒ぎしていた。今やゴーストタウン化したそうした夜遊びスポットも、今夏からにぎわいを取り戻せるのではと地元民は期待を寄せている。

 タイ政府にとって、この「プーケットモデル」が試金石となる。感染増加が目立たなければ、パタヤやサムイ島など他の人気観光地も、10月から隔離なしで外国人観光客を受け入れる方針だ。

 また今後タイは、ワクチン接種を証明する「ワクチン・パスポート」の導入も視野に入れている。この動きは他国でも広がりそうで、海外旅行するには“パスポート”が2枚必要になる時代が来るかも。

 ☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く」(辰巳出版)。