【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】そろそろ本格的な春ですね。ワクチン接種も始まり、アフターコロナも見据えた生活に変化していく中、今回は何かとギスギスしがちだった家庭生活のリセットも図りませんか?という話です。

 家庭や夫婦の円満に、行政が真剣に取り組んだプロジェクトがありました。宮崎県の日南市が始めた「夫婦円満都市推進プロジェクト」。

 イクメン市長でもある﨑田恭平市長が「市の活性化は夫婦の円満から!」と始められたプロジェクトです。世の中の最小単位である夫婦が円満であれば、夫も妻も働きやすく、働きがいも生まれ、結果として地域産業の活性化につながるという、素晴らしいお考え。

 では、円満夫婦の秘訣は?と探ったところ、「家事分担」というキーワードが出てきました。生活用品メーカーであるライオンの調査では夫と妻の家事の意識や分担にギャップがない夫婦ほど円満という結果が出ました。一方で夫はまだまだ家事に理解が足りない、夫が家事をしても妻にダメ出しされる…という悪循環に陥っている夫婦が多いことも分かりました。

 ならばと、ライオンの暮らしマイスターさんが夫に家事を教え、ほめ達の私が妻にほめかたを教えよう!という不思議で楽しく大真面目なプロジェクトがスタートしました。

 講座の当日は、夫が暮らしマイスターに教わった洗い物をして、脇で妻がそれをほめるという実技を行いました。最初はぎこちなかった夫婦もどんどん雰囲気がよくなっていきます。初日には3組に挑戦してもらいましたが、3人の夫が最後に言ったセリフが同じなので笑えました。それは、「もう洗うものないんですか?」――よっぽど楽しかったんですねえ。

 また、ここでのポイントは妻にもダメ出しを一度封印してもらうこと。「何やってるの!」「違うじゃない!」とダメ出しをしたくなるところをグッとこらえてもらい、夫の家事のがんばりをほめてもらうのです。夫はほめられるとうれしくなって、さらに張り切るという図式です。夫婦して「成長する実感」も「貢献する実感」も感じられる、すばらしいプロジェクトでした。

 この話には後日談もあり、9か月後にフォローアップで再会したご夫婦は、みなさん明るく冗舌で円満でした。何より家庭内に「ありがとう」が増えたといいます。お互いのことに関心を持ち、助け合い、「当たり前」という言葉に隠れてしまいがちな「ありがとう」を探すだけで、夫婦も家庭も温かな場所に変わります。新生活に向かう今こそ、ぜひ実践してみてください。

☆まつもと・ひでお 1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。