【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】誰にでも苦手な人はいますよね。またコロナ禍でオンラインのやりとりも増える中、微妙なニュアンスが伝わらない人がいたりで、モヤモヤすることも。私も「松本さん、苦手な人でもほめるんですか?」とよく聞かれます。確かに、苦手な人をほめるのは難しいです。そんな時の私の回答は、「ほめるとは価値を発見して伝えること。苦手な人でも何かしらいいところを見つけてほめますよ」となるわけですが、行動も発言も何もかもが「なんでそうなの!?」って相手がいますよね。ただこれは個性の差です。人と人とはまったく違うもの。違って当然です。

 たとえば、目的が大切な人と、方法が大切な人がいます。何か仕事を頼んだ時に、「なんのためにそれをするのですか?」という人と「どうやってそれをするのですか?」という人がいますよね。目的を大切にする人に、「この手順でお願いね!」と方法だけ言っても納得してくれませんし、方法を大切にする人に「お客さま満足の実現のため!」と言ってもじゃあ何をしたらいいのかと困惑されたり。また、人との関係性や対応が、熱い人やクールな人も。これはすべて個性。人は違っていいものです(暴力や犯罪は別ですが)。

 違いとは、実は自分にない部分でもあります。自分に足りない部分を補ってくれるのが、実は苦手な人なのです。違いがあるからこそバランスがとれます。違う相手こそ自分を成長させてくれる相手と思うと、少し考え方が変わってきませんか。

 こんな話もあります。起業したての小さな会社は、社長の個性と似た人の集まりであることが多いといいます。分かり合えるし、話も早い。ところが大きく伸びる会社は、社長の個性と違うタイプを受け入れる会社だそうです。より多くの消費者に商品が届きやすくするには、さまざまな見方や意見が必要ですよね。

「いやあ松本さん、理屈は分かるけど、やっぱり苦手は苦手で、モヤモヤとかイライラを感じちゃって」。そんな方におすすめのことば選びは「嫌いじゃない」です。

 相手のことを好きになれないけれど、じゃあ嫌いってほどでもないよな…と感情のガス抜きをしてみる。「苦手だけれど、まあ、嫌いじゃないか」。そこからスタートすると、相手の良さが見つかるばかりでなく、自分の「幅」も広がります。無理に好きにならなくて大丈夫。今年は「嫌いじゃない!」から始めてみましょう。

☆まつもと・ひでお 1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。