【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】新型コロナウイルスの“震源地”ながら、中国は昨年、主要国の中で唯一、GDP(国内総生産)がプラス成長だった。今は海外からの逆流入を最警戒して厳しい入国制限を敷き、ほぼ“鎖国”状態。それで困っているのが不妊治療業界だ。

「コロナ前は、子宝に恵まれない夫婦はカンボジアやマレーシア、ロシアなどで不妊治療や代理出産するケースが多かった。中国国内には当局の許認可を持つ病院が少なく、1年以上の順番待ち必至だから。でも、今はコロナ禍で海外へ行けなくなり、国内では卵子の違法売買が横行している」とは上海在住の駐在員。

 湖南省長沙市では昨年末、高利貸しグループが借金のカタを卵子で払わせていたとして逮捕された。KTV(中国式カラオケ)で働く女性の借り主たちに「貸した金が返せないなら体で払え」と売春を強要。さらに「卵子をよこせ」と迫ったという。卵子を取られた“夜の女”は約700人に上るとみられている。

 また大手紙「澎湃新聞」によると、中国各地の高校や大学の女子トイレには、「高収入アルバイト」と称し、卵子を買い集める落書きがあり、社会問題になりつつあるとか。
「兼業も可、2万~10万元(約32万~160万円)。学業がおろそかになることもなく、風俗でもありません」

「10日(卵子提供の意)なら1万~5万元(約16万~80万円)、10か月(代理出産の意)なら18万~22万元(約290万~350万円)。借金やお買い物、整形でお金ご入用の方」

 こんな文言と一緒に、国内最大SNS「WeChat」のIDが書かれているんだそう。そこに連絡すると、卵子の提供や代理出産を持ち掛けられ、女性の身長や学歴、ルックスなどで、バイト代は高くも低くもなる。仲介業者は、卵子提供者のこうした個人情報、さらには全国統一大学入試「高考」の点数まで教え、顧客に売り込みをかけるという。

「中国では『捐卵』、つまり無償での卵子提供は認められているが、売買は違法。リスクを冒してまで闇売買されるのは、それだけ需要があり、儲かるから。経済が発展したとはいえ、中国の若い女性たちにとって数万元は大金。仲介業者から『これも立派な人助け』などとささやかれ、安易に卵子を売る女性が後を絶たない」(前出駐在員)

 売った女性も処罰対象となるが、なかなか末端まで摘発されることがないのは「香港やウイグル、またコロナ関連の取り締まりが優先されている事情がある」。また、精子も同様に売買対象で「善意の寄付という形をとることが多いが、優秀とされる男性の“闇”精子に4万元(約64万円)の値がついたこともある」と駐在員は明かす。

 ☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。