【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】不倫を罰する古代中国の“チン処刑”をまねて間男を懲らしめるという仰天事件が20日、中国広東省で起きた。

「南方都市報」など複数の地元メディアによると、人妻が不倫相手と情事にふける現場に夫が仲間3人を引き連れ乱入。夫らは慌てる間男の全身を殴打し、グッタリしたところでパンツ一丁のままロープで縛り上げ、竹カゴに閉じ込め、そのまま近所の池に放り込んだという。身動きが取れず溺れて泣き叫び、命乞いする間男…。

 夫らは犯行の一部始終をスマホで撮影し、中国版ツイッター「ウェイボー(微博)」にアップ。動画は瞬く間に拡散し、間男は中国全土のさらし者となってしまった。

 当然、動画を見た人々の通報で当局も動いた。頼(ライ)を名乗る夫(41)らは、翌21日までに逮捕された。取り調べに頼容疑者は「感情的になってしまった」と供述。当の間男は命からがら竹カゴから脱出、病院へ運ばれ、幸い命に別状はないという。

 古代中国には「浸猪籠(豚カゴ沈め)」という不倫の罰があった。家畜の豚を運ぶのに使う竹製のカゴに不貞の者を押し込めて水に沈める。特に1300年代後半の明から1900年代初頭の清の時代に多く行われていたと伝えられる。

 裁きを下すのは村の長老。配偶者の不義を知った夫や妻の申し立てで、コミュニティーの倫理や秩序を重んじる村会により浸猪籠の決定が下される。実際は間男だけ水に沈められたり、男の方は逃げてしまったりということも多かったようだ。

 この罰には「定まった相手以外との肉欲にふける者は、人間ではなく豚に等しい」という意味が込められ、浸猪籠で死ぬと人間に生まれ変わることはないとされた。貴族など上流階級の間でも、禁断の恋に走った者たちは浸猪籠にかけられたといわれる。そうした美男美女の処刑シーンは歴史モノの華流ドラマでもたびたび登場する。

 この罰がよく行われていたとされるのが広東省東部の岩前村だ。石灰岩が浸食されてできた洞窟に地下水が溜まり「緑窟潭」と呼ばれる美しい天然のプールがあり、そこが処刑場に使われた。

 水底に潜ったダイバーが8年前、手を鉄の鎖でつながれた大量の人骨を発見。考古学者が調査し村の伝承と照らし合わせたところ、浸猪籠で処刑された人々と分かった。いずれも清朝末期から中華民国時代(1900年代前半)の人骨で、100年前、不倫は命がけだったと証明された格好だ。

 中国のSNSでは不倫現場を押さえ、モメる男女の動画がよく流出するが、さすがに浸猪籠は前代未聞。ネットに動画を上げたらすぐ足がつくことぐらい分かるだろうに…。歴史ドラマの見過ぎか!?

 ☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く」(辰巳出版)。