【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】マレー半島先端の“リッチな小国”シンガポールに、最恐心霊スポットがある。マレーシア国境のジョホール海峡に浮かぶウビン島だ。

 10平方キロメートルほどの小さな島。摩天楼が連なるシンガポールのイメージとは異なり、ジャングルや湿地帯が広がる。木造の素朴な家屋が並ぶ村があり、人口たった約40人。サイクリングスポットとして人気の秘境だ。

 地元ニュースサイト「アジア・ワン」は、「シンガポールで最も幽霊の目撃談が多い場所」としている。現地駐在員によれば「夜中にジャングルで白人の女の子がたたずんでいるのを見たとか、どこからともなく女性の笑い声が聞こえたという体験をした人は多い」という。

 近ごろは“ゴーストハンター”が島を訪れることもあるほどだとか。その霊の正体は、100年ほど前に亡くなったドイツ人の少女とされている。

「当時シンガポールはイギリス領で、ウビン島にはドイツ人家族が営むコーヒー農園があった。1914年に第1次世界大戦が起こり、英国軍は敵国ドイツの人々を拘留するため島に上陸。家族と離れ離れになった少女は崖から転落し、命を落とした。腐敗し、アリに覆われた少女の遺体は、中国人労働者が見つけて埋葬したが、それ以降、島ではずっと心霊現象が絶えないと言い伝えられている」(駐在員)

 1974年には、少女の霊を鎮めるため廟が建立された。ところがなぜか「運気が上がるスポット」として一時期ギャンブラーに人気になってしまった。それで成仏できないのか、今なお少女の霊の目撃談がやまない。

 その廟には、古びた人形が供えられ、不気味な雰囲気を醸し出している。これは島民の夢に少女が現れ、人形を欲しがったため、買ってきて祭ったのだそう。

 ウビン島は42年2月、シンガポール攻略を目指す日本軍がまず上陸した場所でもあり、そのとき犠牲になった民間人や日本兵の幽霊も出るという。また70年代には凄惨な強姦殺人が島内で起き、地元民を震撼させた。とにかくいわくつきの島なのだ。

 地元の超常現象研究者ノエル・ボイド氏は、心霊体験をした一人。「島の海岸でキャンプしていたとき、深夜にテントの周りから女性の笑い声や足音が聞こえてきて、恐ろしくて眠れなかったことがある。その夜は一睡もせず、明るくなるとすぐ島を出た」

 それでボイド氏は、この島をシンガポール一の心霊スポットと認定した。SNSでの反応欲しさに深夜、島を訪れる若者もいるようだが、何らかの霊障に見舞われる覚悟はしておくべきだろう。

 ☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。