【人生を変えることば選び】スケッチブックを使って伝説になった営業マン

2020年07月08日 13時10分

【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】今回はことばの達人たちが相手のことばを引き出すテクニックについて。いつも感じるのですが、相手のことばを引き出せる人は、相手に信頼されている人。つまり、仕事や営業などでも大きな成果をあげる人でもあります。


 以前、私が外資の損害保険会社で営業トレーナーをしていたころ、ものすごい成績をあげる新人の営業マンがいました。もの静かな彼でしたが、お客さまからの信頼が厚く、同じお客さまからたくさんの契約をいただいてきます。その秘密は、なんといつも彼の営業カバンに入れられていた、小さなスケッチブックにありました。


 いったいどうしていたのでしょう?


 中小企業の経営者が主なお客さまだった彼は、契約が決まるたびに、スケッチブックを出したといいます。


「僕がいま、契約の書類を準備しますので、その間、このスケッチブックに社長の好きな言葉を書いていただけませんか? 座右の銘でも、僕へのメッセージでもなんでも結構です」


 突然スケッチブックを出された社長は驚きますが、「え? そうなの? なんでもいいの?」と言いながら、「一期一会」「感謝」などと書いてくれます。


 それだけではありません。続けて「社長はそのようなことばを大切にされているんですね。そこにはどんな思いがあるのですか?」とまた質問をすると、「実はね、こんなことがあって…」「もともと私が起業した理由はね…」などと一気に深い話に。契約後のスケッチブックなので一気に信頼関係を築くことに成功、そしてさらに多くの契約に結び付くというわけです。


 不思議なもので、スケッチブックを介すことでそれまではビジネス上のやりとりであったのが、心と心のやりとりに変わっていったといいます。その伝説の営業マンの名前は山植(やまうえ)さん。いまだに「山植さんのスケッチブック」として、私の元職場では語り継がれているようです。


 ところで、このスケッチブック方式、営業職じゃなくても使えます。例えば、初めて会う人に対して「知り合った人にひと言書いてもらっているんです!」とメモ帳にでも書いてもらう。これだけで相手には強く印象に残りますし、思わぬ縁をつなぐきっかけになるかもしれませんね。今回のコロナ禍で人との触れ合いの大切さが再認識される今だからこそ、試してみてはいかがでしょうか。

 

☆まつもと・ひでお 1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。

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