【人生を変えることば選び】生徒数を倍にした「ほめちぎる自動車教習所」

2020年04月16日 10時00分

【ほめ達・松本秀男 人生を変えることば選び】今回は「ほめる指導」を取り入れ、業績を伸ばした自動車教習所を取り上げます。

 ことば選びの重要性を伝える日々の中で私が思うのは、人間、「ダメ出しは本能!」ということ。最近の新型コロナウイルス騒動においても言えますが、人は無意識のうちにアラ探し、欠点探しをしてしまいがち。ただ、ダメ出しばかりでは“心の元気”がなくなってしまいます。

 そこでこんな教習所があるということも知っておいていただければなと、ご紹介します。三重県の伊勢市にある南部自動車学校は「ほめちぎる教習所」として知られています。「ほめ達」をいち早く取り入れ、教官全員が笑顔で生徒をほめちぎるのです。ダメ出しの「減点法」から脱却し、ほめる「加点法」の指導を行っています。

 まず、教官たちが出勤の際にはスマイルスキャンという装置で90点以上の笑顔にならないとタイムカードを押せないという本気ぶり。そして特筆すべくは、「加点法」の指導内容です。

 なんとこちらでは生徒が脱輪してもほめます。「うん! すぐにブレーキ踏めた! OK! 大事故は免れた! ただハンドル切るタイミング遅れたね、次はそこを直そう!」

 S字クランク1つにつき、11か所「ほめポイント」があると言います。ほんと?と思えますが、S字クランクはそれだけ技術がいるわけです。昔はできていないところを「そこがダメ!」と減点法でダメ出ししていましたが、今はまずできるところを加点法でほめる。そしてもちろんほめっ放しにせずに、できていなかった点について、「どうして、そうなったのか」を踏まえ、具体的にアドバイスをする形式に変えました。

 するとこの教習所、卒業検定合格率がグングン上がり、卒業生の事故率がドンドン下がっています。甘やかしではなく、高度な指導法ということがお分かりいただけましたでしょうか。さらに「ほめちぎる教習所」は評判を呼び、少子化の中、生徒数が「倍」になってしまうといううれしい結果も生まれました。

 言うまでもなく、教習所は命に関わる運転の技術や安全に関して学ぶ場所です。「危ない」ということを伝えるためには、大きい声や厳しい言い方になるのも理解はできます。ただ、そんな中でも重要性を伝えるためには減点法よりも加点法が成果につながる早道だと、教官がたが気づいたのが素晴らしいですね。ことば選び一つで人は変われる好例だと思います。

☆まつもと・ひでお=1961年東京都生まれ。国学院大学文学部卒業後、さだまさし氏の制作担当マネジャー、ガソリンスタンド経営を経て、45歳で外資の損害保険会社に入社。トップ営業マンとなり数々の実績を作る。現在は一般社団法人・日本ほめる達人協会専務理事を務め、企業セミナーなど多方面で活躍中。著書に「できる大人のことばの選び方」や「できる大人は『ひと言』加える」など。