昭和生まれのアラフォー~アラ還が懐かしむ日本の歌手や楽曲を、平成生まれ世代や外国生まれのミュージシャンはどう聴くのか? マーティ・フリードマンと風男塾の紅竜真咲、桜司爽太郎が日本の懐メロの魅力を分析していきます。今回のテーマはキャンディーズ。曲を聴きながら読んでみてください。(隔週連載)

【キャンディーズ論】

 ――今回は桜司さんが好きなキャンディーズについて。マーティさんは聴いたことありますか

 マーティ:詳しくはないですが、ヒット曲のメドレーを聴いて、いい曲が多くて感動しました。桜司さんが生まれる前の人たちなのに、どうして知ってましたか?

 桜司:母が好きだったのと、自分は以前に歌ったことがあって、いいなと思ったんです。「春一番」とか「年下の男の子」とか。

 ――その「春一番」を聴いてみましょう。発売は1976年3月です

 マーティ:(イントロを聴きながら)ギターの音色がこの当時の独特の音ですね。たぶん、セッションミュージシャンが3人ぐらいしかいなかったんじゃない? だからいろんな曲でこの音が聞こえるんだと思います。

 紅竜:この音色って70年代的なんですね。ギターの音が目立ちますね。

 マーティ:そうなんですよ! この当時の日本の曲は、洋楽よりギターの音が前に出てるんです。イントロでギターソロ、Aメロでギターのオブリガート(主旋律を引き立てる助奏)、半ばでギターソロがあって、アウトロでもギターソロ。存在感がすごく大きいんです。これ、3人の女の子のための曲でしょ? なんでこんなにギターの存在感が必要ですか。

 桜司:そっか、バンドじゃないのに。

 マーティ:そう! 例えばスパイス・ガールズとか、洋楽の女の子グループでこんなにギターの音が主張することないです。昔、これに気が付いた時、ポップなのにこんなにギターが大きくてボーカル並みに目立つって、ルール違反じゃん! どんな国ですか日本は、と思いました。でもギタリストとしてはうれしいです。

 桜司:ギターの音を邪魔と思わないし、スッと入ってくるんですよね。

 マーティ:これ持論なんですが、日本人は昔から三味線の音を通じて、ひずんだ弦の音になじみやすいんじゃないかと思うんです。

 紅竜:三味線…。言われてみれば確かに。

 マーティ:僕が書いた風男塾の曲もギターソロ長いじゃん。ギタリストにとって日本はパラダイスだよね(笑い)。

 紅竜:ギターソロが盛り上がるポイントだったりしますね。「おい!おい!」って掛け声出したり。

 マーティ:その掛け声も日本的なんですよ。曲の途中のちょっとした隙で名前言ったりするじゃん。「L、O、V、E、アイラブ~」とか。ああいうのアメリカで見たことないです。

 桜司:ないんですか?

 マーティ:ないないない。ボーカルが「Say Hey!」とあおってお客さんが言うのと、もともとの音源に入ってるのを言うぐらいです。日本のは打ち合わせとリハが必要なぐらい複雑じゃん。あれ、いつから始まったんですか? 誰が決めてるんですか?

 ――始まったのはまさにこのキャンディーズからです。「全国キャンディーズ連盟」というファン団体があって、東京支部がコールを決め、印刷して地方支部に送り、集まって練習したそうです

 桜司:そのころから続く日本のアイドルの“伝統”なんですね。

 マーティ:伝統といえば、歌舞伎も途中で掛け声ありますね。でもオペラやミュージカルでは、お客さんが途中で声かけたりしません。その違いが現代の歌手とファンの掛け合いの違いにも出てるのは面白いですね。

☆ふだんじゅく=男装ユニット。「人を元気にする」という活動理念のもと、歌やパフォーマンスを行うほか、男性ファッション誌のモデルも務めている。11月6日にニューシングル発売予定。

☆マーティ・フリードマン=米・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍した。04年から日本に拠点を移し活躍中。風男塾のシングルカップリング曲「Excuse You!」を作曲&プロデュース。