お笑いコンビ「平成ノブシコブシ」の徳井健太(41)が、芸人たちの生きざまを考察した著書「敗北からの芸人論」を刊行した。人気番組「ゴッドタン」(テレビ東京系)で腐り芸人として再ブレーク。その的確なお笑い考察力に注目した東野幸治から後継者に指名され、本作を執筆した。そんな徳井が本作に込めた思いや芸人愛、さらにピン芸人日本一決定戦「R―1グランプリ2022」(来月6日)の行方を占った。


 ――東野さんから後継者に指名された

 徳井 たまに会うんですけど、そういう絡みが一切ないんで間違っていたら嫌ですね(笑い)。

 ――腐り芸人として再ブレーク

 徳井 番組(※注)には腐り芸人じゃなくて諦め芸人として呼ばれてたんです。でも横の2人(インパルス板倉、ハライチ岩井)の腐りが猛毒なので、諦めだけじゃ太刀打ちできなくて。プロデューサーの佐久間(宣行)さんから「いいところを褒めたり、こういうところを見てあげてという悟りの方に変わっていったように思う」と言われて、確かにそうかもしれないと。

 ――本に対して「誰が誰に何を言うてんねん」という声も

 徳井 分析はしていないつもりで書いている。成分は書いてなくておいしさだけを書いてる。それこそ笑い飯さんはM―1を完璧に分析して勝った人だから、そういう人が使える言葉。ぼくはファンに近くてファンだからこそ「あの輝き見た?」って伝えたくて。それをギュッとして書いてる。

 ――本にも「答えは『偉人』の死後、周りが勝手に想像すればいい」と書いている

 徳井 松本(人志)さんは言わないし、東野さんも言えない、天才側の人は。やっぱり、オレらが言うしかないですよね。

 ――芸人の多くが「ダウンタウンになれない絶望」を抱くと言われますが、明石家さんまさんという天才もいる

 徳井 さんまさんは新喜劇の座長の感じが強い。いろいろな面白い人が台本上で動いていって、その人たちがミスしてミスしてさんまさんが笑いに変えていくというのがさんまさんの世代の人たち。ダウンタウンさんはNSC1期生。師匠とかの感覚を断ち切って、オレらがこれから笑いの中心になっていくんだという気持ちが強かったから全く違うものを作っていたと思いますね。

 ――さんまさんの考察を書く予定は

 徳井 さんまさんはイヤがりますよね(笑い)。でも、さんまさんも絶望していたって言ってましたからね。若い時は全然ダメでみたいな。

 ――話題のアンジャッシュ渡部建さんについて考察してもらっていいですか

 徳井 渡部さんは、いわゆる五角形パンパン芸人。ボケもツッコミもMCもイジられもできる、すごい芸人ですよね。

 ――しかし復帰の道のりは険しい

 徳井 ポジティブな声を掛けたいですよ。「白黒アンジャッシュ」(千葉テレビ)に呼んでもらえたら渡部さんのここからの希望もしゃべりたいし、児島(一哉)さんともお話ししたいなあ。

 ――もうすぐR―1。注目の芸人は

 徳井 基本的に自分が思いつかないネタが好き。ZAZYのネタは腰を抜かしたんで、ああいうネタは好きですね。あと、金の国(渡部おにぎり)はキングオブコントで普通に出てきちゃうと思うんでヘタしたら2冠取るんじゃないかと。ベタじゃないし、シュールでもないしリアルだし。

 ――悟ったのではなく、もがき続けているからこそ生まれた考察力では

 徳井 うーん。もがいてたら、この場所にいたという感じかもしれないですね。

※注…テレビ東京「ゴッドタン」の企画「腐り芸人セラピー」。腐り芸人三銃士と言われる、徳井、インパルス・板倉俊之、ハライチ・岩井勇気の3人が相談にやってきた芸人にダメ出しやアドバイスを送る人気企画。


 ☆とくい・けんた 1980年9月16日生まれ。北海道出身。吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」を結成。テレビ番組「ピカルの定理」(フジテレビ系)などバラエティー番組に出演。ユーチューブチャンネル「徳井の考察」も開設している。