【マーティ&Pyxis 昭和ソングって素敵じゃん】山口百恵が生み出す“魔法”

2019年06月07日 20時04分

マーティ・フリードマン(中)、Pyxisの豊田萌絵(右)と伊藤美来

 アラフォー、アラフィフ、アラ還にとって懐かしくて思い入れがある日本の歌手や楽曲を、平成生まれ世代や外国生まれのミュージシャンはどう聴くのか? 昭和歌謡と戦隊モノが好きな声優ユニット・Pyxis(ピクシス)の豊田萌絵と伊藤美来、そして米国出身のギタリスト、マーティ・フリードマンが日本の懐メロの魅力を分析する新企画のスタート。

【山口百恵論】

 ――初回は豊田さんが好きな歌手として挙げた山口百恵です。生まれるずっと前、1980年に引退しているのに、なぜファンに
 
 豊田:私は女性アイドルが好きで、ハロプロにはまった時に昔のアイドルのことも知りたくなって、いろいろ聴く中で70~80年代のアイドルにたどりつきました。百恵さんは14歳でデビューして、引退は21歳とすごく若いのに、歌声が大人っぽくて年齢にマッチしないし、映像を見て、目線の運び方やしぐさ、オーラに魅了されました。

 マーティ:確かに、若いのに大人っぽいよね。百恵さんは聴いた瞬間に誰が歌ってるかわかるじゃん。これとてもすごいことですよ。声も歌い方も独特で、曲との相性も抜群。ソングライターも一流ですね。

 ――好きな曲として「イミテイション・ゴールド」を挙げました

 豊田:百恵さんの曲はほぼ全部好きなんですが、この曲はメロディーはあるけどセリフっぽい歌い方から始まって、イントロでテンポが速くなって盛り上がる。その緩急の付け方が面白いなと思って。

 マーティ:それ、僕よりいい解説かも(笑い)。この曲、出だしはお化け屋敷みたいな音ですね。その後のセリフっぽいところは、50年代のエセブルースっぽい。その後は普通に歌謡曲になっていってる。音としてはラテン系のモチーフが多く使われてますよ。

 ――ラテン系ですか

 マーティ:そう。当時の歌謡曲全般に言えることだけど、タンゴみたいな旋律が多いんですよ。この曲もそんな感じ。日本の昔の音楽、民謡とかにはその要素は全くないじゃん。歌謡曲からラテンの影響が多く入ったと思います。ロマンチックな感じを出すためです。

 ――確かに、戦後すぐあたりの曲とも全然違います

 マーティ 百恵さんはアイドルの中では珍しく声のキーが低いじゃん。それが女の人が憧れる理由だと思います。

 豊田:アイドルだけど、笑顔で愛想よくというタイプより、クールなイメージですね。

 マーティ それに歌がうますぎないのもポイントなんですよ。例えば「乙女座 宮」とか、もっと上手だったら、曲のかわいさが出なくなる。バランスの取り方がとてもうまい。これ、日本ならではなんです。英米はとことんうまいのを求めるから「なんでそれを聴いてるの?」と言われてしまうんです。

 豊田:スーザン・ボイルみたいなうまい人が求められるんですね。

 マーティ:そういうことです。これ、日本でカラオケ文化が発展したのと密接な関係があると思います。普通の人でも歌える曲が多いじゃん。華原朋美さんとか、ピッチが甘くてもそのまま出してました。マライア・キャリーのようなうますぎる人の曲をカラオケで歌うと、悲惨な事故になります(笑い)。めちゃ恥ずかしい結果になりますから(笑い)。

 ――百恵さんが活躍したのはマーティさんが日本に住み始める(2004年)ずっと前ですが、知ってましたか

 マーティ:実は僕は百恵さんの武道館引退コンサートのビデオを持ってます。ブラジル・サンパウロの日本人街をブラブラしてたら見つけて、すぐ買ったんです。最後、「さよならの向う側」を歌いながら泣いてるじゃん。あのシーンがたまらないです。洋楽でああいう引退コンサート、見たことないよ。

 伊藤:え、そうなんですか!

 マーティ:まず、21歳という若さで絶対に引退しません。引退するからといって泣くことも絶対ないです。どんな時でもステージでは泣きません。泣きながら歌っている人、見たことないよ。でも僕は百恵さんの泣きながら歌う姿がめちゃ印象に残って、そのイメージが忘れられなくてファンになったんです。

 豊田:最後、マイクを置くシーンとか、感動的です。

 マーティ:豊田さんの同年代の友達は聴いたことありますか?

 豊田:私、いま24歳なんですが、百恵さんは有名な曲が多くてみんな知ってるので、カラオケで歌うと喜ばれます。

 伊藤:マーティさんは百恵さんのどういうところが好きですか?

 マーティ:声ですね。声に恋したんです。歌はほとんどフラットですね。でもプロデューサーは「もっと頑張って高音出して」とは言わない。この独特の歌い方で魅力を引き出してます。彼女は決してめちゃうまいわけではないけど、この声と歌い方で“魔法”が生まれてるんですよ。

 伊藤:めちゃうまいわけじゃない?

 マーティ:下手という意味ではなく、海外アーティストのような圧倒的な歌ではないってことです。でも彼女の歌声には“マジック=魔法”があります。大事なのはこの“マジック”なんです。だから2人のようなずっと後の世代を魅了できるんです。

 豊田:確かに、私は年齢にマッチしないあの歌声が好きです。

 マーティ:ただうまい人なんて山ほどいます。レコーディングの仮歌を歌っている人はだいたいめちゃうまいです。でも大ヒット歌手にはならない。これ一番言いたいんですが、歌手で最も大切なのは、その人の歌声に“魔法”があるかどうかです。「イミテイション・ゴールド」も、曲とあのセクシーな歌い方と、当時18歳と若いのに大人っぽい声がマッチングして見事に“マジック”が生まれてますよ。

 豊田:私、百恵さんは映像を見るのも好きなんですが、醸し出すあの特別な雰囲気も“魔法”ですね。

 マーティ:ファンがたくさんついて、いつまでも愛される人には“マジック”があります。松田聖子さんもそうです。 


☆マーティ・フリードマン=米ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍した。04年から日本に拠点を移し活躍中。7月5日に東京・渋谷で「Guitar Spirit of 鰻Night」を開催。

☆Pyxis(ピクシス)=若手人気声優の豊田萌絵(とよた・もえ、1995年3月15日生まれ、茨城県出身)と伊藤美来(いとう・みく、1996年10月12日生まれ、東京都出身)によるユニット。2016年にアルバム「First Love 注意報!」でメジャーデビュー。6月5日に4thシングル「恋せよみんな、ハイ!」発売。6月8日に「Pyxis 4th Anniversary Party 2019」開催。