酒気帯び運転でひき逃げ事故を起こし、自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道交法違反の罪で起訴された元「モーニング娘。」の吉澤ひとみ被告(33)が保釈から一夜明けた28日、所属事務所に「芸能界引退」を申し入れ、契約解除となった。所属事務所は事件直後から契約解除の方針だったが、このタイミングでの発表となった裏とは――。

 所属事務所「ジェイピィールーム」は28日夜、書面で各報道機関に「吉澤ひとみに関するご報告」と題し「本日、弊社は所属タレントの吉澤ひとみより、芸能界から引退したいとの申し入れを受けました」と明かし「この申し入れを受け、吉澤ひとみと弊社で締結された専属マネージメント契約を本日付けで解除致しました」と発表した。

 吉澤被告本人も署名入りの書面で被害者への謝罪と反省を伝え「今まで18年間お世話になった芸能界からは引退致します」と引退を発表した。

 契約解除に至った経緯について所属事務所は「弊社と致しましても、今回の事件の社会的影響の大きさを強く認識しており、本人と面談し、その意向を確認したうえでこの結論に至りました」と説明している。

 事故直後は所属事務所も拙速な判断は控える方針だったが、ドライブレコーダーで明らかになった事故の悪質性や、二転三転する吉澤被告の供述に対する社会的反響の大きさを考慮せざるを得なかった。

「事務所幹部の間では、契約解除はすでに決まっていた。仮に無期限謹慎など、少しでも芸能界復帰の目を残してしまえば、世間からの反発は必至で、イメージ商売である芸能プロダクションとして成り立たなくなる可能性も十分にあった」(事情を知る芸能関係者)

 それでも、保釈から一夜明けてのタイミングで引退発表になったのは「モーニング娘を支えた功労者である吉澤への、事務所としてできる最後の配慮だった」(同)。

 芸能プロとして世間的体裁を気にしたメリットだけを考えれば、逮捕後即、契約解除の方が良かった。ただ、その方法だと、吉澤にとっては大きな“心の傷”になりかねない。

「もちろん、事件を起こしたのは吉澤で契約解除されても文句は言えない。ただ、吉澤の責任感の強さは関わった人間なら誰もが知っていて、自分の口から『引退します』というのが想像できただけに、本人と面談できる保釈を待った。一方的にクビを通告するのでなく、吉澤からの言葉を待った」(同関係者)

 現役時代は、モー娘のリーダーとしてグループを引っ張り、18年間、芸能界で生きてきた。すぐに契約解除にしないことで、世間から「甘い!」と反発されるリスクを承知のうえで、グループ功労者に対して、せめてもの配慮を優先した。

 今年はモー娘などのグループ、ハロー!プロジェクト結成20周年ということで様々なイベントが企画されていた。

 今年初めには初代リーダー・中澤裕子ら、結成メンバーが集結し、メジャーデビュー曲「モーニングコーヒー」を披露。また、この夏には2度の喫煙問題で事務所を解雇され、10年以上、同じステージに立っていなかった加護亜依がスペシャルゲストとして参加。吉澤被告も加護と同じステージに立ち、パフォーマンスを披露した。それらを含め現役、OGに多大なる迷惑をかけてしまったことは間違いなく、吉澤被告に対して、不満や批判の声が上がっていたのも事実だ。

 だが、吉澤被告は最後に自ら、芸能界引退という選択をした。

「吉澤はこれから罪を償っていかなくてはいけない。ただ、大きな社会的制裁を受けたので、事務所の中には『真摯に罪を償い、その中で、もし許されるならば、少しでも安らかに過ごしてほしい』という声もある」とは同関係者。

 吉澤被告は近く開かれる公判に元芸能人として出廷することになる。